デビュー間もない頃タイガー・ウッズはメジャーに臨む意気込みを聞かれ「大会を支配する存在になりたい」と語っていた。その言葉通りデビュー翌年(1997年)のマスターズで12打差、2000年の全米オープンでは15打差の圧勝を飾った。44歳になった孤高の王者の現在のモチベーションは?

強い父の姿を見せたい。40代になった王者の変化

「お金はいいプレーのあとについてくる。とにかく他を寄せつけない圧倒的な存在になりたい。それがすべての原動力」とギラギラした瞳で語ったタイガーの若かりし頃の姿が全米オープン開幕直前、ゴルフの面白動画をアップしているインスタグラム「Skratch」に投稿された。

44歳になったタイガーはもはや人前でむき出しの闘志を表すことはなくなった。穏やかな姿に慣れているだけに、目の前の相手は誰でも容赦なくなぎ倒す勢いのまるで野獣のようなタイガーに「こんな時代もあったな」と感慨に耽ってしまった。

画像: 昨季優勝したマスターズではトーナメントを支配することではなく「父親が勝つ姿を見せたい」という気持ちが勝っていたというタイガー・ウッズ(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

昨季優勝したマスターズではトーナメントを支配することではなく「父親が勝つ姿を見せたい」という気持ちが勝っていたというタイガー・ウッズ(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

思えばタイガーがゴルフシーンに登場する前“マタドール(闘牛士)”の異名をとったカリスマ、セベ・バレステロスが「相手の首根っこを足で踏みつけたいと思っていた」と語ったことがある。相手がアーノルド・パーマーであれジャック・ニクラスであれ、闘牛士のようにトドメのひと矢を首に射し込む。そして優勝する。「それが快感だった」とセベ。タイガーのいう「圧倒的な存在」というのはそういうことかもしれない。

タイガースラム(4大メジャー連続制覇)を達成した2000年代前半までタイガーのモチベーションはセベのように目の前の相手に容赦なくトドメを刺し絶対君主になることだったのだろう。

それが徐々に変わってきたのが2000年代後半。ヒザや腰の故障に度々泣かされ08年の全米オープンの勝利を最後にメジャー勝利から遠ざかった。

しかし彼は不死鳥のように甦った。昨年4月のマスターズ。人生ではじめてメジャーに勝った思い入れの強い大会でスポーツ史上最高の復活劇を演じて見せた。

そのときのタイガーにとって「トーナメントを支配すること」は優先順位の1番ではなかった。本格的にゴルフをはじめた息子チャーリー君と長女・サムさんに父親が勝つ姿を見せたい気持ちの方が勝っていた。

史上最強といわれながら子供たちがものごころついてからはメジャーに勝てずもがく姿ばかりを見せてきた。「パパより(サッカーの)メッシの方が凄い」といわれ苦笑いしたことも。彼らに強い父をアピールすること、それがタイガーにとって最大のモチベーションだった。

一点を見つめ「支配的存在になる」と語った20年前とは別人のような柔和な瞳で子供たちを抱きしめたタイガー。ケガや不倫スキャンダル、逮捕騒動など幾多の試練を乗り越えたからこその笑顔だった。

休みの日は子供たちと2000ピース、3000ピースのパズルに興じながら「じつは色弱だからパズルは得意じゃないんだ(苦笑)」と言い訳するタイガー。成績はどうあれいまの彼は幸せそうだ。

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