ドライバーやアイアンのライ角やシャフトなどをフィッティングによって選び、自分専用のクラブを使えるようになって久しいが、パターにもその波が押し寄せているようだ。ギアライター高梨祥明がカスタムパターの世界へご案内。

アジャスタビリティの“父”がスタートさせた知る人ぞ知る“オデッセイ”パター

TOULON DESIGNパターと聞いて、ピンと来る人はかなりのクラブマニアに違いない。さらにODYSSEY TOULON(トゥーロン) PUTTERと聞いて、アレ!? っと不思議に思った人は、かなりの事情ツウだと思う。

現在、オデッセイパターが展開中の「TOULON(トゥーロン) PUTTER」は、通常のオデッセイパターとは一線を画す、クラフトマンテイストを盛り込んだ削り出しタイプのラグジュアリーシリーズである。TOULON(トゥーロン)というのは人の名前で、このブランドのデザイナー/プロデューサーであるショーン・トゥーロン氏のことである。

画像: オデッセイのノン・インサートの本格削り出しシリーズが、『トゥーロン デザイン』パター。定番のヘッド形状を揃え、カスタムビルドに力を入れている(写真/高梨祥明)

オデッセイのノン・インサートの本格削り出しシリーズが、『トゥーロン デザイン』パター。定番のヘッド形状を揃え、カスタムビルドに力を入れている(写真/高梨祥明)

トゥーロン氏は、元々テーラーメイドゴルフのセールスレップとしてゴルフ業界に入り(82年)、その後独立し93年に「ZEVO(ジーボ)」というフィッティングに基づいたクラブ販売を主とするゴルフメーカーを興した実業家でもある。

90年代前半にアイアンだけでなく、ウッドのライ・ロフト角パーツ(40種)が取り外せるフィッティング用キットを作り、ヘッド+ネック(ライ角)+シャフト+グリップの組み合わせでゴルファーにぴったりのクラブを販売するという、実に先進的なクラブ販売を実践した人物なのだ。

「ZEVO(ジーボ)」を売却した後は、00年にテーラーメイドに再び招かれ、商品担当のバイスプレジデントとして新生・テーラーメイドの舵取り役を担った。

トゥーロン氏はテーラーメイドで「300シリーズ」、「500シリーズ」という3つのヘッドサイズ(つまり3つの重心設計)を選択できるメタルシリーズを企画し、これが大ブレイク。その後、取り外しが可能でウェートカートリッジの重さの配分で重心位置を設定できる“MWT(ムーバブルウェートテクノロジー)”を搭載した「r7クワッド」。シャフトスリーブの機能でフェースアングル(ロフト)を調節できる“FCT(フライトコントロールテクノロジー)”を搭載した「R9」シリーズも、トゥーロン氏が開発部門にアイデアを投げたものだ。

フィッティングクラブブランド→可変ウェートシステム→可変スリーブシステム。トゥーロン氏の過去の仕事を振り返れば、彼の中に“ゴルフクラブはカスタムしてこそ本物”という信念があることは明らかである。以前、彼はそのきっかけについてこう語っていた。

「大学時代にティーチングプロとして女性やビギナーを教え始めた。その中で疑問に思ったことが、“なぜ、みんな違うスウィングパターンを持っているのに、同じようなクラブを使っているんだろう?”ということなんだ。僕には合わないクラブが変則スウィングを作っているように思えた。本当は自分に合ったクラブを見つけるべきなのにね」(トゥーロン氏・談/09年取材時)

そして、彼は“パターこそ、人それぞれの好みやスタイルがある。カスタムできるべきだ”とも言っていた。00年に彼がテーラーメイドに戻ったときは、メタルウッドのおまけのように作られたパターしかなかったが、彼はこれを不満に思い「ROSSA(ロッサ)」という本格パターブランドを立ち上げた。

そして、テーラーメイドを離れた後、2015年に設立したのも、パターブランドの「TOULON DESIGN」だった。当時、ゴルフ見本市で見かけ声をかけると、彼は熱っぽく「TOULON DESIGN」パターのコンセプトを語ってくれた。

「ヘッドの種類はブレードからマレットまで多数用意。そしてネックもベンドシャフトからショートスラントまでストロークタイプに合わせて選べるようにした。それぞれのヘッド重量をソールプレートで調節できる仕組みだよ。もちろんシャフト、グリップも選べるし、刻印のカラーもカスタムできる! どう? すごくクールだろ!」

2016年「TOULON DESIGN」は、キャロウェイゴルフの傘下となり、オデッセイのラインナップとして展開されることになる。そしてトゥーロン氏自身も、今はキャロウェイゴルフ・シニアバイスプレジデントであり、オデッセイブランドのゼネラルマネージャーである。

「TOULON DESIGN」は、いつの間にか日本サイトからもカスタムオーダーが可能に!

トゥーロン氏が熱っぽく語っていた「TOULON DESIGN」パターのカスタム販売は、現在、「TOULON GARAGE」という名称で、キャロウェイのホームページから簡単に注文できるようになっている。米国ではやっているのを知っていたが、日本でもできるようになったことを恥ずかしながら知らなかった。

画像: 『TOULON GARAGE』のシミューレーション画面。左上/ヘッド形状選択→右上/ネック選択→左下/アライメントライン選択→右下/ロゴカラー指定→シャフト選択(種類・長さ)→グリップ選択

『TOULON GARAGE』のシミューレーション画面。左上/ヘッド形状選択→右上/ネック選択→左下/アライメントライン選択→右下/ロゴカラー指定→シャフト選択(種類・長さ)→グリップ選択

日本のサイト(https://www.callawaygolf.jp/jp/TOULON-GARAGE)では、4種類のヘッドタイプを選択でき、ネックのパターン(モデル別で種類は異なる)、仕上げとソールウェートをそれぞれ3種類から選んでいく。そして、アライメント(方向指示線)のパターンやロゴ/刻印のカラーも自由にカスタムしていける仕組みだ。選択は希望項目をポチポチとクリックしていくだけの簡単操作、よくあるスポーツシューズのカスタムオーダーのように画面で完成イメージを確認できるのも楽しい。

この「TOULON GARAGE」だが、個人的にはソールウェートを軽くできる!というところに大きな魅力を感じた。たとえば通常装着は20グラムのステンレスプレートだが、これを7gのアルミニウムプレートにすることができるのだ(逆に40gタングステンプレートにすることも可能)。

これまでマレットパターに興味はあっても、ヘッドがどれも重たすぎるために使うに至らなかったのが正直なところ。市場では見かけることのない“ヘッド軽めのマレット”が作成できる。この一点をとっても、「TOULON GARAGE」は非常に魅力的である。

まずは、サイトで様々な仕様をポチポチしながらシミュレーションを繰り返してみる。最後の注文ボタンさえ押さなければ、いくらシミュレーションで遊んでも、お金はかからないから安心だ(笑)。 “欲しいパターが手に入るのに、なぜ注文ボタンを押さないの?”。旧知のトゥーロン氏なら、そう煽ってくるに違いない。1ラウンドで最も多く使うゴルフクラブはパターである。本来、ドライバーよりお金をかけても損はない。PCの前でいろいろと考えてしまう秋の夜長である(笑)。

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