ティショット、グリーンを狙うショット、アプローチ……すべての指標が最高峰
6アンダーと出場選手中ただ一人のアンダーパーフィニッシュ。2位のマシュー・ウルフとは6打差と、終わってみればデシャンボーの圧勝となった全米オープン。
デシャンボーの4日間通算データを見てみると、パーオン率は64%で5位タイ、パット数はは11位タイ。フェアウェイキープ率は41%で26位タイと高くないが、平均飛距離は325.60ヤードで7位と高い順位となっている。
ティショット、グリーンを狙うショット、アプローチ、それぞれのスコアへの貢献度を示す指標(ストローク・ゲインド)はいずれも3位以内。オールラウンドかつハイクオリティなプレーを展開したことがわかる。
結果、バーディ数13は4位タイ。そして、出場選手中唯一2つのイーグルを奪ってもいる。圧倒的攻撃力で難関コースを攻め、グリーンを外してもアプローチでしのぐ。王者にふさわしい、圧巻のゴルフだ。
そのプレーを見ていると、やはり飛距離のアドバンテージが目立った。とくに最終日は平均飛距離336.30ヤードで全体の5位。フィールドのアベレージは305.73ヤードだから、平均よりもなんと30ヤードも飛ばしていたことになる。
全米オープンの深いラフにつかまっても、短いクラブを持つことができればパーオン率は高まる。肉体改造によって飛距離アップに成功したデシャンボーだが、そのパワーアップによってラフの抵抗に負けないアイアンショットにも磨きがかかっているようだ。
プロゴルファー・中村修は、デシャンボーのクラブセッティングも勝因のひとつに挙げる。デシャンボーが使うアイアンは、全番手が7番の長さに統一されたワンレングスアイアンだが、それが活きたという。
「ワンレングスアイアンはロングアイアンになるとボールが上がらないデメリットがありますが、ショートアイアンだとボールがすごく上がります。高弾道で打つことで、ラフからでも硬いグリーンに止められていました。500ヤードを越えるパー4でも、セカンドを8番や9番で打てて、しかも高い弾道で攻められたことは大きかったですね」(中村)
科学者のような頭脳とプロレスラーのような肉体を持つ男。今回の全米オープンは、そんなデシャンボーの伝説の始まりとなる試合だったのかもしれない。