デシャンボーのバランスは「B0〜B3」くらい?
ゴルフクラブの「バランス」はヘッドがどれだけ重いのかを計測し、数値化したもの。アルファベットでAから順にB、C、D、E……と重くなり、そのなかでもたとえばD0、D1、D2……というように数字が大きくなるにつれて重くなる。ヘッドがどれだけ効いているか、あるいは振ったときにクラブを重く感じるか、軽く感じるかを示すため「スウィングウェート」とも呼ばれる。
ここで質問。エースドライバーのバランスが分かるだろうか?D0? D1?意外と把握していないという人もいるだろうし、ましてや「自分にとってベストのバランスは?」と問われたときに答えられる人は少数だろう。
たとえば全米オープンを制したブライソン・デシャンボーはどんなバランスのクラブを使っているのだろうか?米メディアが報じるところによれば、彼の使うヘッドの重量は185~195グラム、シャフトの長さは45.5インチ、シャフトは60TXを使用。そしてグリップは「Jumbomax」という極太グリップを選んでいてその重さが120グラム だという。その数値から、石井氏はこう分析する。

全米オープンを制したブライソン・デシャンボーが使用するドライバーのバランスはどうだろうか?(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)
「ヘッドが185~195グラムということはレディスクラブと大体同じくらいの重量を使っていますね。そのヘッド重量だとすると、45.5インチのシャフトに普通の50~60グラムのグリップを入れた場合でもC5〜C8くらいの軽いバランスのはずです。ただデシャンボ―の場合は120グラムのグリップを入れているということになると、B0~B3くらいの相当軽いバランスになる可能性もあります」
最近の人気クラブでいうと、テーラーメイドのSIMがD3、ダンロップのゼクシオイレブンがD2となっている。デシャンボーの使用しているドライバーは、かなりヘッドが“軽い”ということになるわけだ。ゼクシオイレブンのレディースモデル、ロフト12.5度のLシャフト装着モデルのバランスは「C0」で、それよりもはるかに軽いバランスとなる。
総重量でいえば、デシャンボーのドライバー>男性用ドライバー>レディスドライバー。
バランスでいえば、男性用ドライバー>レディスドライバー>デシャンボーのドライバー、という順番になる。「デシャンボーだけ特別なのでは?」と思われるかもしれないが、たとえば池田勇太もCバランスのドライバーを使ったことが話題になった。
こうなってくると、適正なバランスとはなにかがわからなくなってくるが、石井氏は「バランスの数字にとらわれる必要はない」と言う。
「たとえばD2のバランスのクラブを使っていても、グリップを短く持っていたらヘッドは軽く感じますよね。これはバランスが軽くなったのと同じことです。今平周吾プロのように、クラブを短く握りたいゴルファーはいますから、数字を気にする必要はないんです」
フィッティングの現場では、シャフトを半インチカットするといった調整を行うこともあるが、「それだけでもバランスは3ポイントは変わります」という。

バランスの数字に囚われずに「振りやすい」という感覚が大事(撮影/田中宏幸)
「バランスとは、ゴルファーが振りやすい長さ、重さ、硬さを追求したときに、結果的に出る数字。なので、バランスが合わないな、と感じるとすれば、それは長さか、重さか、硬さが合っていないと考えるのが妥当なんです」
バランスの数字にとらわれず、自分の「振りやすさ」という感覚を大切にする。当たり前のことだが、それがなにより大事なようだ。