日本では6月以降ゆるやかに利用者が増加
まずゴルフ場のプレー予約サービスを提供しているGDOが、ゴルフ場送客件数についてまとめたレポートを見てみよう。
表Aは今年と昨年とでの月別ゴルフ場送客件数をまとめたもの。本来なら送客件数増が見込まれる春のゴルフベストシーズンの3~5月は、緊急事態宣言や自治体の自粛要請が重なったこともあり打撃を受けた。
しかし6月以降はゆるやかに上昇し、8月のデータでは前年比125%以上、GDOの8月の実績としては過去最高を記録したのだという。
レポートの中で興味深かったのが、8月の送客件数データをゴルフコンペの予約に絞ると前年比86.1%と下回っている点。新たな生活様式に合わせ、大人数が集まることになるコンペの需要は減ったが、それを大きく上回るほど個人利用が増加したというのだ。
1人当たりのプレー回数は増加。若年層ゴルファーも約2倍に。理由は?
この理由をGDOは新しい生活様式の普及にあると分析。リモート勤務を採用する企業の増加によって余暇時間が増えたことはもちろん、ゴルフ場側でも接触感染を避けるための策が講じられていたことも大きい。
また、プレーしやすい時間帯を比較的早めに予約できていたゴルフ場の会員権を持つゴルファーやコンペを企画する法人からの需要が減ったことによって、より好条件の予約枠が掲載されやすくなったたことも送客数増の要因ではないかという。
プレー単価自体も少しリーズナブルになっており、実際にすべての世代に置いて1人当たりのプレー回数も増加傾向にあるとのことだ。
次に世代別でデータを見ると、20~30代の若年層の予約件数はなんと前年の2倍にまで増加しているという。
これは、ゴルフがソーシャルディスタンスを保ちやすい特性を持つスポーツであることに加え、昼食休憩を取らないスループレーや1人予約、2サムなどのプレー様式を採用するゴルフ場も増え始めたことで、新たな余暇時間の選択肢としてゴルフを選びやすくなったからではないかという。
レポートではGoogleが提供する、単語の検索数を可視化するサービス「Googleトレンド」のデータを引用し、「ゴルフ 初心者」などのキーワード検索が、8月では前年に比べて6%増加していると指摘。GDOが提供する初心者向け記事コンテンツの閲覧数も約17%増加しているという。
米国でもラウンド数は増加傾向。新規のジュニアゴルファーがとくに多い?
こういったラウンド数の増加傾向は、日本のみならず海外でも同様のデータが出ている。
ゴルフ業界の動向を調査する「ナショナルゴルフファウンデーション(NGF)」と「ゴルフデータテック」が発表したレポートによれば、アメリカで2020年8月のラウンド総数は、前年の同月から20.6%増加。具体的な回数で言うと、約1000万回ほど多くなっているという。
アメリカでもパンデミックが本格化した2020年4月では前年同月より42.2%ラウンド数が減少したが、5月以降は前年比プラスが続いているという。
州別に見ても、2020年8月はすべての州で少なくとも2%以上は前年よりラウンド数が増加。とくに上昇幅が大きかった州として、テキサスの39%、フロリダの37%、アリゾナの31%を挙げた。
熱帯地域では猛暑の影響で増加幅は少なかったが、それでも増加傾向にあることから、秋のシーズンにかけてラウンド数はさらに増加するのではないかと推測。2019年のアメリカ全体でのラウンド数は4億4100万にも上るが、2020年は最終的にそれよりも8%から10%増加するのではないかという。
アメリカでのラウンド数が増えた主な要因は、ジュニアゴルファーの増加が大きい。とくにパンデミックによるロックダウン以降ジュニアゴルファーはその数を大幅に増やし、6~17歳のゴルファー人口は最終的に前年比20%増まで上る可能性が高いことがNGFの調査によりわかったのだという。
2019年のアメリカの6~17歳のゴルファー人口は約250万人だというから、2020年で新たに約50万人もの子どもたちがゴルフに触れるという計算になる。
生活様式が一変したことにより、ゴルフのプレースタイルもコロナ禍以前と以後では様変わりしているが、日米ともにラウンド数の増加、そして若年層ゴルファーの増加が確認できたことは、今後のゴルフ界にとって明るい話題と言えるだろう。