「サンダーソンファームズ選手権」を制したセルヒオ・ガルシアは世界ランク51位から38位までジャンプアップ。3年ぶりに米ツアーで優勝したわけだが、なにがきっかけだったのだろうか。海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポートする。

天才的なショットメーカーと評価が高いものの、ここ数年スランプに陥っていたセルヒオ・ガルシア。今年で40歳を迎え、2児のパパとなったが、2017年マスターズ以来、3年半ぶりに米ツアー「サンダーソンファームズ選手権」で優勝を遂げた。今大会の優勝により2000年代、2010年代、2020年代と3つの年代で優勝を記録し、通算11勝目を記録。欧米ツアー合わせて10年連続優勝を達成している。

「素晴らしい。娘のアゼリアと、(今年生まれた)エンゾに、アメリカで優勝するところを見せることができて本当によかった。今まで一生懸命やってきたが、そういうボクを(妻の)アンジェラ、(子供の)アゼリア、エンゾ、スペインにいる家族たちが支えてくれている。実はコロナウイルスで父は兄弟2人を亡くし、非常に辛い日々を送っているが、今回の優勝は辛い思いをしている父に捧げたい」

画像: 「サンダーソンファームズ選手権」で勝利を掴んだセルヒオ・ガルシア(写真はGettyImages)

「サンダーソンファームズ選手権」で勝利を掴んだセルヒオ・ガルシア(写真はGettyImages)

父ビクトルさんにはスペイン・マドリードに9人の兄弟がいるが、なんとそのうちの2人は今年のコロナウイルスで死亡し、その一人は試合前の土曜日に亡くなったばかりだったという。ガルシアにとっても、幼い頃からかわいがってもらっていた叔父2人が亡くなったことは衝撃的だったに違いない。

悲しみの中「サンダーソンファームズ選手権」に初出場し、優勝を遂げたガルシアだが、今回の優勝は彼にとってとても大きな意味を持つ勝利となった。

2019〜2020年シーズンは12試合に出場したうち、たった1試合しかトップ10入りを果たしておらず、フェデックスカップランキングも135位だったため、プレーオフには進めなかった。そして不調は今季に入っても続き、3試合のうち2試合は予選落ち。2017年マスターズで優勝した後は米国で思うような成績を残せず、苦しい日々が続いた。その上9年間に渡り、エリートゴルファーの証である世界ランク50位を外さなかった彼が、先週の試合に欠場している間に51位に陥落。だが、たった1週間で38位にカムバックを果たした。

ショットメーカーのガルシアにとって、最大の悩みはパッティングにあった。ストロークゲインドパッティング部門については、246位で今大会を迎えていたというから、パットの悩みは相当深かったようである。しかし今週パターが入るようになった理由は、実は以前から行っていたという「目つぶりパット」にあった。その方が感性を生かしたパッティングができるからだ、と明かして話題になったが、今大会ではショットも好調、パットもよく決まっていた。

「ボクのいいところは、ショットの調子が良ければ、パットの調子良くないと優勝できないという風には思わないことだ。パットの調子が平均か、平均よりもちょっといいくらいで、今週のようなプレーができていたら、ほとんど毎週のように優勝争いができるんだよ」

「今までやり続けてきたことを、今週はずっとできていた。自分を信じ、やってきたことをやり続け、“お前は素晴らしいプレーができているんだから、ただ今までやってきたことをやり続ければいいんだ”と自分に言い聞かせたよ」

悩める天才は、自分がまだやれるということをこの優勝で再認識したのだという。

デビュー当時から、天才的なスペインのスターとしてタイガー・ウッズと比較されることも多かったガルシア。メディアにライバルとして書き立てられ、元々憧れの存在だったタイガーとの間に、いつしかギクシャクとした空気が流れるようになってしまった。気分屋ガルシアの、正直だが子供じみた発言や態度が物議をかもすことも多く、成績よりもトラブルの話題が多く上るようになってしまったのは残念だが、アンジェラさんと結婚し、子供が誕生した後はいい夫、父として精神状態も安定しているようだ。

「子供が出来てから、彼は人間的に丸くなったね。以前は自滅してしまうことも多かったけど、最近はそういう姿をあまり見なくなった。家族ができたことは彼のゴルフにとってもとてもいいことだと思う。もともと彼はすごい才能の持ち主なんだしね」

とブラント・スネデカーはガルシアの人間的な成長について語っている。

かつてビジェイ・シンは40代で世界ランク1位に輝き、年間9勝を挙げた。家族を持ち、人間的な成長を遂げた彼が、この優勝をきっかけに輝きを取り戻すことも十分にできるはずだ。タイガーの活躍に存在が霞んでしまったガルシアの、本領発揮はこれからなのかもしれない。

This article is a sponsored article by
''.