10時間練習がつくった一級品のショット力
今週はスタンレーレディスが静岡県の東名CCで開催されます。アップダウンの激しいコースで、傾斜地からのショットの精度が試されることになりますが、私が注目したのはツアー屈指のショットメーカー・稲見萌寧選手です。
2018年のプロテストに合格するも、その年のQT(予選会)で結果を残せず、出場優先順位は103番目。稲見選手の2019年は、推薦での出場に限られる状態からのスタートでしたが、オフの間に奥嶋誠昭コーチに師事し持ち球をドローからフェードに変更。ショットが安定し初優勝を挙げるまでに成長しました。
練習の虫としても知られる彼女の練習時間は1日10時間とも言います。その積み重ねは、稲見選手の持ち味でもある高いパーオン率に表れています。2019年は1位。今季も2位につけています。奥嶋コーチと作り上げた精度の高いフェードヒッターのスウィングを見てみましょう。
まずは画像Aから。アドレスではボールからあまり離れずに立ちますが、これはフェードヒッターの特徴です。ボールの近くに立つ分、前傾角も浅め。肩の力が抜け適度に両わきの締まった美しい姿勢です。
テークバックでは手元が体から離れていかずにクラブヘッド、手元、両肩の位置関係をキープしながら丁寧に始動しています。この位置関係を守りながらのテークバックは手先で上げる動きを排除し、体との連動性も再現性も高くなります。お手本にしたいですね。
画像Bのトップに位置をみると、手元が遠いややフラットなトップで、左腕と左手首はフラットで、フェースの向きとも同調するように一直線。腰の回る度合いに上半身の回る度合いがプラスされて非常にバランスのいいトップです。
画像B右を見ると、インパクト時のシャフトの角度の延長線上にシャフトが下りてくるオンプレーンなダウンスウィングであることがわかります。下半身で作った回転力が上半身、腕と連動し、クラブがその回転に引っ張られるように動いていることが見て取れます。
画像Cでは、アドレスとインパクトを比べて見ましょう。右のインパクトの画像はまるで静止しているように見えますが、連続写真の一コマです。
通常はインパクトでは手元はアドレス時よりも高くなりヘッドのトウ側が下がる「トウダウン」と呼ばれる現象が見られますが、稲見選手の場合はそれがごくわずかです。これはボールと自分との距離が遠くないこと、インサイドから下りてきたクラブをインサイドに振り抜く、イントゥインの軌道であること、前傾角がキープされていることなど様々な要因が考えられますが、すごい精度です。インパクトはアドレスの再現、などとよく言われますが、まさにそれを実現しています。
インパクト前後はわずかにアウトサイドインの軌道で振り抜き、ボールをつかまえながらターゲットラインよりもやや左に打ち出すストレートに近いフェードボールで攻めています。下半身で作った回転力を上手に生かしイントゥインの軌道で打つお手本になるスウィングです。
全英女子オープンでは強風と雨、慣れないリンクスコースの難コンディションにラウンド中に心が折れすぎて真っすぐになった、と独特の表現で語ってくれました。日本では経験できないことを経験し、さらに練習に身が入っていることと思います。
全英に出場したこともあって今季はまだ4試合の出場。世界に通用する器を持つ選手の一人ですので、怪我にだけは注意しつつ、その練習量でますます成長する姿を見せてもらいたいですね。