「プレッシャーは全然なかったですね(笑)。今までは皆がプレーオフをしている様子を見て、プレーオフになったら緊張するのかな?とか思っていたんですけど、あっという間に終わりました」
スタンレーレディス最終日、最終組のひとつ前の組でプレーし、「68」とスコアを伸ばして自身初となるプレーオフに挑んだ淺井咲希。
稲見、ぺ・ソンウという強敵を相手にパー5で行うプレーオフを前に、淺井が考えたのは「バーディかイーグルを出さなければ勝てない」ということだった。そこにはプレーを終えたばかりの18番ホールのプレーへの反省があった。
バーディをとって「頭ひとつ抜ける予定だった」18番、ピッタリとつけるはずのアプローチウェッジで打った3打目がスピンで戻りすぎ、バーディを奪うことができなかったのだ。スピンが適量となるひと番手大きいピッチングウェッジのフルショットで打てる120ヤードを残そう。そう考えて、淺井はプレーオフへと突入していく。
しかし、誤算が生じる。ティショットをラフに入れたことにより、微妙に距離が足らず、3打目の距離が123ヤード残ってしまったのだ。
「123ヤードだとピッチングウェッジでカップまで届かないんです。プレーオフはバーディかイーグルじゃないと勝てないのに、カップに届かないとイーグルはないですよね。だからピッチングではなく9番アイアンを選択しました」
9番アイアンの飛距離は138ヤード。その番手で123ヤードを打とうと思えば、当然難しいコントロールショットを強いられる。結果、そのショットは奥にこぼしてしまう。
結果だけ見れば、ただの番手ミスに見えるかもしれない。しかし、そのショットを決断する背景には、残り123ヤードからでもあわよくば入れてやろう、勝負を決めようというアグレッシブな意思があった。それは、イチカバチかの勝負が求められるプレーオフ、それも3人プレーオフならではの選択だったろう。
もし、淺井のセカンドショットがあと3ヤードだけ余計に飛んでいたら……勝負に「タラレバ」は禁物だが、それくらい微妙な勝負を彼女たちはしている。
惜しくも通算2勝目を逃したが、淺井は2勝目につながる課題をしっかりと見つけたという。
「調子が悪いなかでも苦手なところを詰めて、上手くハマれば優勝争いができるんだということがわかって、そういう意味で前向きになれました。今回はゴルフ的にもショット的にも悪くなくて、勝てた試合。チャンスについても決めきれなかったところがあるので、そういうときに自信を持ったパットができるように練習していきたいです」