スコットランドでの2戦連続予選落ち。アメリカ本土に渡り、2週間の隔離期間中の練習で復調し、米本土では4連続で予選を通過したものの、課題も多く見つかった渋野日向子選手の海外挑戦。これまでの6戦を振り返ると、6戦目の「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」が難コースであったことはすごくラッキーだったと思いました。
たとえば、ある程度手応えを感じた米本土2戦目の「キャンビアポートランドクラシック」や3戦目の「ショップライトLPGAクラシック」で終えていたら、米ツアーのトップ選手とのレベルの差をそこまで感じられなかったはずだからです。全米女子プロで渋野選手は11オーバー。優勝したキム・セヨン選手とは25打の差があります。
「足りないものばかりで(新たに)見つけるものしかないですし、2か月でこんなにいろんな思いをするなら、1年間戦ったときにはどんな思いをするのか、どう成長するのだろうと。セッティングも芝も日本以上に難しいですし、日本以上に成長の幅が大きいと思うので。まだまだこれから、自分が楽しみですね」
海外での6試合を振り返り、渋野選手自身はこう語っていました。一方で米ツアーでは3年先輩で同年齢の畑岡奈紗選手の成績を見ると、「ANAインスピレーション」では7位タイ、「ショップライトLPGAクラシック」は4位、「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」では3位タイの成績でした。渋野選手はそれぞれ51位、27位、58位タイ。
世界ランク15位の渋野選手と6位の畑岡選手の差は大きい。この2カ月の6戦で学んだものは、この「差」だったのではないでしょうか。その「差」が教えてくれるのは、気候や芝、風などコンディションが大きく異なる中で成績を残すには日本だけでの経験では通用しないということでしょう。
それを誰よりも痛感したのは、もちろん渋野選手本人です。彼女自身は、その「差」を伸びしろととらえています。
「飛距離どうこうという問題ではなく、飛距離以外のところで何打も縮められる。グリーン周りで何打も損しているというのはこの6試合を戦って感じた。あとはパッティング」
試合ごとに芝種が異なるのが米ツアーでは当たり前。毎週のように違う芝という状況でのアプローチ、パッティングの差が大きいと感じたようですが、その通りだと思います。
「全米女子プロ」で2位に入った元世界ランク1位のパク・インビ選手の飛距離は4日間平均250ヤードで渋野選手の268ヤードと比べても20ヤード近く飛んでいません。しかし、4日間の平均パット数ではパク・インビは29、対して渋野選手は32と、実に3打の差があります。それだけでも4日間で12打の違いです。
海外での試合を経験したことで見えてきた世界とのレベルの差、このくらいやれば戦えるのではないかという見通しの”甘さ”に気がつけたこと、これが今回得た一番の収穫だったのではないでしょうか。この宿題をスーツケース一杯に詰め込んで帰国した渋野選手は、今後練習方法も変わるでしょうし、さらに目の色を変えて課題克服に取り組むことでしょう。
世界との差は25打。しかし、その打数の差を埋める時間はまだ十分にあります。差しあたっては、2週間の自主隔離期間を経て臨む今シーズン国内2戦目「三菱電機レディス2020」でどんな姿を見せてくれるか、楽しみにしたいと思います。