始動の前にお尻をターゲット方向に向けて、大きくヒールアップをするリズミカルな予備動作。バックスウィングではアウトサイドに上げて、ダウンスウィングでインサイドに下ろす特徴的な動き。どこからどう見ても変則スウィングに思えるが、プロゴルファー・中井学は「僕は変則スウィングだとは思わないです」と、こう語る。
「1967年のマスターズチャンピオンのゲイ・ブリューワー選手もウルフ選手のようなスウィングタイプ。ウルフ選手のように動きが大きい選手は少ないですが、ゲイ・ブリューワー選手のようなタイプは結構いるんです」
さらに「2003年の全米オープンチャンピオン、ジム・フューリックもウルフと同じ8の字スウィングが特徴的です」と中井はいう。
「フューリックの8の字スウィングを見て、『これは反復性の高いスウィングだな』と思っていたんです。それで試合会場で練習している彼にどういうフィーリングで打っているのかと直接聞いてみると『真っすぐ上げて、真っすぐ下ろしている』と言われたんです。アウトサイドに上げているように見えて、彼の中では真っすぐだったんです。実際に、このような動きは理にかなった動きだと僕自身思います」
変則に見えるウルフやフューリックのバックスウィングだが、あのように振るからこそ、再現性が高まると中井は指摘する。
「ウルフの場合、バックスウィングでこれ以上外(アウト)に上がらないところまで上げて、ダウンスウィングでこれ以上内(イン)に入らないところまで下ろしてきていますよね。思い切りやるからこそ、再現性が高まるんです。変則スウィングと呼ばれているけど、ゴルフを始めたときからあのスウィングで最大限に飛距離がでるようにしていっただけ。彼はあれしかやらないし、してこなかったから今がある。身につけたものを『成熟』させるという意味ではアマチュアの方にも参考になるはずですよ」
フューリックは、自身のスウィングを「真っすぐ上げて、真っすぐ下ろす」と表現した。ウルフは、自身のスウィングを変えずに磨き上げ続けた。つまり、外からの見た目はどうあれ、彼らにとって彼ら自身のスウィングは変則でもなんでもない、オーソドックスでナチュラルなスウィングなのだ。
言われてみると、アマチュアゴルファーでもスウィングは独特だけどいつも同じ弾道が打てる上手い人が身の回りに一人や二人はいるもの。自分のフィーリングになじんでいれば、見た目には“変則”でも、その人にとっては“オーソドックス”なのかも。