昨年から今年にかけて、人気選手が続々シニア入り
先週のチャンピオンズツアー(米シニアツアー)「SAS選手権」ではアーニー・エルスが最終日、上がり2ホールで連続バーディを獲り、コリン・モンゴメリーと1打差で今季2勝目を飾った。
「ゴルフはおかしなゲームだよね。数週間前はすごく短いパットを外してプレーオフに進めなかったのに、今日は約12メートルくらいの長いパットが1発で決まるんだから」
昨年の10月17日で50歳になり、まもなく51歳を迎えるエルスだが、今年はシニアツアー本格参戦1年目。あいにくコロナウイルスの影響で試合数が激減しているが、それでも10戦2勝と5分の1の確率で勝利数を重ねている。現在チャールズシュワブカップ(賞金ランキング)は1位。2位には長年シニアツアーで大活躍し、米シニアで過去賞金王に5回輝いたベルンハルト・ランガーがつけているが、南アフリカのビッグスター、エルスのシニア登場で、王者の座も脅かされそうである。
アーニー・エルスはPGAツアーで通算19勝を挙げ、メジャー4勝を記録。かつてはタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、ビジェイ・シンらと「ビッグ4」と呼ばれ、世界の強豪の一人だった。昨年末は「プレジデンツカップ」の世界選抜チームのキャプテンを務め、今年からシニアに本格参戦。時にはレギュラーツアーに出ることもあるが、「昔から一緒に成長した仲間や、顔なじみの先輩たちと一緒にプレーできるのは楽しい」とシニアライフも満喫している。
「たまたまマーク・オメーラと練習グリーンで一緒になった時、彼は僕が使っているパターと同じものを使っていた。僕は数週間前、ペブルビーチの試合でパットの調子が悪かったので、パットの名手の彼に見てもらった。そうしたら、彼は僕がどうすべきかを感じるままに語ってくれ、素晴らしいアドバイスをしてくれたんだよ。そのおかげで今週はパットが入り、優勝できた。彼にごちそうしないとね」
レギュラーツアーでは、エルスにアドバイスをする後輩は滅多にいないだろうが、シニアツアーに来ると、先輩や同年代の仲間たちが気軽にアドバイスをしてくれる。現役時代、どんなプレーをしていたかは、長年一緒にプレーしてきた仲間たちが一番よくわかっているから、アドバイスの内容も的確だ。
最近シニアに入って活躍している選手に、エルスのほか、今年の5月12日に50歳を迎えた全米オープンチャンピオンのジム・フューリックもいる。彼もまた「アリーチャレンジ」「ピュアインシュランス選手権」で2勝。3戦2勝とエルス以上に驚異的な勝率を誇っている。
その他、フューリックと同じ生年月日でシニア入りを果たしたマスターズチャンピオンのマイク・ウィアや、6月16日にシニア入りしたフィル・ミケルソンもいる。ミケルソンは8月下旬、レギュラーツアーで予選落ちし、フェデックスカップ・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」への切符をつかみ損ねると、突然シニアツアー「チャールズ・シュワブ・シリーズ・アット・オザークスナショナル」への出場を表明。シニアデビュー戦初Vを遂げた。その他、スウェーデンのロバート・カールソンもシニア入りし、今年はチャンピオンズツアーに本格参戦している。
こうして昨年から今年にかけて、海外のビッグネーム達が次々にシニア入りを果たしているが、日本でも同様に人気有名選手たちがシニア入りを遂げている。丸山茂樹、藤田寛之、桑原克典、佐藤信人、塚田好宣、篠崎紀夫、小山内護……などがすでに50歳を迎えた。今でもレギュラーツアーで戦う選手もいるが、昔なじみのいるシニアツアーへと徐々に主戦場を移している選手も多い。
今年の「マルハンカップ」では、塚田好宣、篠崎紀夫の二人の同級生プレーオフ対決となり、篠崎が優勝。シニアデビューを果たしたばかりの選手たちが、再び顔なじみの選手たちと一緒にツアーでプレーする喜びを感じながら戦っている。たいていは40代半ばになると、レギュラーツアーで思うように活躍ができなくなり、シード権を落とす者、若手に囲まれてツアーに出る気力を失う者などが増えてくるが、先日、48歳の宮本勝昌が「今、ちょうどレギュラーとシニアの間の時間を過ごしているような感覚だが、モチベーションをキープするのが難しい。早くシニアツアーに行きたい」と語っていた。
「50歳」は第2のゴルフ人生へのスイッチ。それまでの過酷なツアー人生とは異なり、今まで頑張ってきた「ご褒美」のような気持ちで仲間たちとのプレーを楽しんでいるエルスのような選手もいる。その気持ちの余裕が好成績につながることもあるのだ。