過去10年で日本オープン初日をトップ10で終えたのはわずかに6人
日本オープンは初日を終えてトップは今平周吾の4アンダー。桂川、河本の両選手は1打差の2位タイ。さらに、トップと3打差の1アンダー9位タイには、大嶋宝(関西高2年)、米澤蓮(東北福祉大3年)、中島啓太(日体大2年)の3人がつけている。
これがどれくらいすごいことか、過去10年の日本オープンの初日の成績を振り返ってみると、トップ10スタートをしたのは今野大喜(2017年、5位タイ)、中島啓太(2016年、4位タイ)、金谷拓実(2015年、8位タイ)、佐藤大平(2014年、4位タイ)、藤本佳則(2011年、9位タイ)、松山英樹(2010年、4位タイ)と、10年で6人しかいない。しかも、今大会でもトップ10スタートを切った中島啓太を除いては、全員がプロ入りをした逸材揃いだ。
過去10年で6人なのが、今年はいきなり5人である。どれだけ異常事態かがわかる。なぜ、ここまでアマチュアが躍進しているのか?
中島啓太をジュニア時代に指導した代々木高校ゴルフ部監督の吉岡徹治氏は言う。
「今年はコロナウイルスの影響で、男子ツアーは試合がないですよね。そのため、プロとアマチュアで練習環境に違いがない。これは非常に大きいと思います。毎週試合があれば、プロは毎試合練習グリーンに芝の上からアプローチできますが、これはすごいメリットなんです。今年はプロだけが恵まれた環境でやっているわけではない。いわばホームアドバンテージがない状態。アマチュア優勝もあり得ると思いますよ」
今回トップ10スタートを切ったうち、桂川、中島、米澤の3選手はJGA(日本ゴルフ協会)のナショナルチームにも選ばれている。プロゴルファー・中村修は「その影響もある」と言う。
「ナショナルチームは、ガレス・ジョーンズヘッドコーチの指導のもと、スウィングのみならず、フィジカル面、マネジメント面の強化も積極的に行っています。今回の開催コースである紫CCすみれコースのような難コースほど、ナショナルチーム仕込みのマネジメントが活きるはずです」
さらに、彼ら若い選手には武器がある。飛距離、そして勢いだ。
「河本力選手は米女子ツアーで活躍する河本結選手の弟ですが、初日終了後のインタビューで飛距離を問われ、『平均で320〜330』と答えています。さらに、もちろん突き抜けた存在ではありましたが、同じアマチュアとして戦っていた金谷拓実選手(今大会からプロとしてプレー)が昨年アマチュア優勝をしたことも大きい。自分はアマチュアだから、という遠慮がなく、のびのびとプレーできているのではないでしょうか」
日本オープンを制したアマチュアは、長い歴史の中で第一回大会を制した伝説のアマチュア・赤星六郎ただ一人。そしてもちろん、プロたちがそれを簡単に許すわけもない。2020年の日本オープン、2日目以降も目が離せないそうにない。