渋野日向子をルーキーイヤーにメジャー優勝まで導いたコーチ・青木翔コーチ。ある日、丸一日を自身のコーチスキルを磨くための勉強に費やした彼に密着した!

選手にとって効率のいいスウィングとは?

スウィングは人によって千差万別。その選手にとってケガのリスクが少なく効率の良いスウィングとは何か?渋野日向子をルーキーイヤーにして「全英女子オープン」を始め国内4勝に導いた理由は、選手の持つ力を最大限に引き出せたからに違いない。

ただ、東京五輪出場や米女子ツアー参戦といった目標の達成に向け、まだまだ課題は多くあり、「コーチとしてスキルを磨く必要性を感じていたのですが、コロナ禍もあり、なかなかその時間がとれなかたったんです」と青木は言う。そんな青木が都内で丸一日をコーチとしての勉強に費やすという日を作ることができたと聞き、密着取材させてもらった。

まず向かったのは、全米のインストラクターランキングで2位に輝くマイク・アダムスの日本における愛弟子的存在の堀口宜篤がいるパフォーマンスゴルフスタジオ。腕の長さや体の動きなど身体的特徴から、選手の持つパフォーマンスを最大限発揮できる握り方やスウィングに導くのを得意とするインストラクターだ。

そのメソッドに従って青木自身をテストしてみると、身長に対して両腕を広げた長さが9センチも長いことがわかった。実は、渋野日向子も身長よりも両腕を広げた長さのほうが長いという特徴を持つ。

「手が長いと、スウィングはアップライトになりやすいんですし、軸の取り方も異なります。今まで(経験的に)感じていたことの理由が腑に落ちました」(青木)

画像: 全米でトップインストラクターに選ばれるマイク・アダムスのメソッドをもとに身体的特徴を計測しエネルギーの出し方を整えた

全米でトップインストラクターに選ばれるマイク・アダムスのメソッドをもとに身体的特徴を計測しエネルギーの出し方を整えた

体型や軸の取り方、足圧を測定して地面半力を使うタイミングなどを整えた上でスウィングすると、なんと7番アイアンでキャリーで185ヤードを連発。普段は170ヤードくらいというからわずかな時間で15ヤードも伸びたことになる。

「そういえば大学時代はこうやって振っていた感じがします。改めて下半身の使い方のタイミングを確認できました。タイプによって使うタイミングは違いますがその違いもよく理解できました」

自分の体の特徴に合わせて体を適正に、正しいタイミングで使うことで選手の能力をより引き出せるようになるという教えは、タイプの似ている渋野を教える青木にとって、大いに刺激になったようだ。

クラブにかかるエネルギーを物理で解析するジェイコブス3D

さて、次に向かったのはスウィングを体の動かし方から解明するのではなく、クラブと体の唯一の接点であるグリップにどんな力が加えられているかから解析する米国の最新理論「ジェイコブス3D」のアンバサダーである松本タスク氏の元。

難解な理論なのだが、ものすごく簡単に説明すると、ゴルフクラブをコントロールするためには、グリップエンド方向に引き続ける力を加えることが大切だというもの。そして、それをどう実現するかの体の使い方はプレーヤーによって異なるという立場だ。

画像: 米国の最新理論「ジェイコブス3D」のアンバサダーである松本タスク氏のセミナーを受講し、その理論を吸収

米国の最新理論「ジェイコブス3D」のアンバサダーである松本タスク氏のセミナーを受講し、その理論を吸収

「クラブに与えるエネルギーを正しい方向に加えることがナイスショットへの最善の方法。そのためにはどう体を動かすべきかというのは、インストラクターのみなさんがプレーヤーによって異なるアプローチで導いていただきたい」と松本氏。

このように、ハウツーではなくあくまで理論だが、直前にマイク・アダムスのメソッドを教わっていたこともあり、青木のなかでは両者につながるものがあったようだ。

パッティングで重要なイントゥイン軌道はどこで作るか

最後に向かったのは、パッティング解析の専門家であるプロゴルファー・橋本真和がいるヒルズゴルフアカデミー。傾斜のある人工マット上にパットのラインを天井に設置されたプロジェクターで可視化する『パットビュー』を使い、ラインとタッチを確認していった「ラインによってフェースの向きや軌道にズレが生じていたことが確認できました」という。

画像: パッティングボードという練習器具を使いイントゥインの軌道とフェース向きを体に覚えこませることで、ラインによって変化するズレを改善した

パッティングボードという練習器具を使いイントゥインの軌道とフェース向きを体に覚えこませることで、ラインによって変化するズレを改善した

橋本によれば、パッティングを安定させるにはストローク中にライ角を一定にすることが重要で「腹筋を使ったり背中を意識したりとプレーヤーによって違いはありますが、体の意識を持ちながらストロークすることを繰り返す中でライ角の変化の少ない安定したストロークが実現できる」(橋本)という。青木自身は、理想的なイントゥイン軌道を体感できる練習器具・パッティングボードを入念にテストしていた。

限られた時間の中で、疑問に思っていることや選手の持つ改善点について活発に質問し理解を深めた青木翔。ツアーコーチたちの多くが最新の計測器を導入し、レッスンスキルのアップデートを盛んに行っている昨今、選手の活躍を影で支え、日本のゴルフのレベルを上げるコーチの活躍にも引き続き注目したい。

取材協力/PGST、ヒルズゴルフアカデミー

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