舞台は海外メジャー「ANAインスプレーション」2日目の14番ホール。ボールはラフに1/3ほど埋まった状況で、スタンスはバンカーのふちギリギリ。かかとが砂に触れているような極めて不安定な状態で、いかんも難しそう。寄せるのはおろか、アマチュアなら「とりあえずラフから出せればOK」に感じられる状況だ。
プロアマ問わず、グリーン周りのラフから使うクラブといえばまずウェッジと考えるはずだが、ヘンダーソンが選んだのはパター。その理由について松田鈴英を指導する黒宮幹仁コーチはこう分析する。
「おそらくバンカーギリギリの不自然なスタンスでは、ウェッジでピン方向に打ち出すことは不可能と判断したのでしょう。だからこそ、少しでも寄せるためにヘンダーソン選手はピン方向を向いて打てるパターを選択したのではないでしょうか。メジャーならではの決断だと思います」
そうしてヘンダーソンはチップインを見事決めたわけだが、「技術的に凄い」と黒宮はいう。
「ボールは右足より外側にセットしていますね。右足の外側にあるボールを普通に打つとボールが右に出てしまいやすいですが、ヘンダーソン選手はヘッドを左方向に抜くことで、うまくそれを防いでいます。さらに、ダウンブローで打つことによって打点をフェースの上にしています。あえて芯を外すことで、ポコンッとラフから綺麗に抜けていったんだと思います」(黒宮)
ラフからはウェッジのロフトでボールを上げるのが普通だが、芯より上で打つことで、ボールにスピンをかけ、それによってボールを上げてラフから脱出させているようだ。そして「これはトッププロだからこそできる技です」と黒宮は続ける。
「アマチュアゴルファーはラフに入った場合はまずそこから3つで上がろうと考えることがベストです。ウェッジでグリーンに乗せることを第一に考え、あとは2パットで上がれたらナイスプレーです!」
その状況から寄せられるのはパターだけだとジャッジし、狙い通りに打ち出してチップインという最高の結果を手繰り寄せたヘンダーソン。やっぱり世界のトップはすごい!