シャウフェレやデシャンボー、ミケルソンが使う計測器の正体は「GC4(ジーシークワッド)」。インパクト前後のクラブスピードや入射角、フェースの向き、フェースの当たった場所などのクラブのデータとスピン量や初速、打出し角などのボールのデータを計測する機器だ。
なぜ海外のトップ選手はこのような機器を使うのか? ティーチングプロとして長く第一線で活躍する井上透によると、「知りたいのは無風状態に比べて風の影響で何ヤードプラスやマイナスになったかということ」だという。
「レーザー距離計でピンまでの距離を計測しますよね。そして、たとえばアゲンストの風を感じているとしましょう。アゲンストだからプラス何ヤード、という感覚で打つわけですが、GCクワッドは無風で高低差がない場合の数値を表示しますので、表示された数値と、ピッチマークがついている場所(キャリーの飛距離)を比べると、風の影響がどれくらいあったかが確認できます。その誤差のすりあわせが大切なんです」
1ヤード単位の精密さで距離を打ち分けるプロたち。肌に感じる風と、それに合わせた力感。その感覚的なものと、機械的な数値をすり合わせることで、より正確なマネジメントを描くことができるというわけだ。
「ゴルフの難しさは、ミスしたときに『なんのミスだかわからない』ということ。5歩ショートしたときに、それが自分のスウィングのエラーなのか、風の読みのミスなのか。それがはっきりさせられるんです。これからのプロの世界においては、わからない世界を極限まで減らすことが目的になりますから、選手がそれをチェックするのは当たり前だと思います。見えない世界を見える化することで実戦的な力がつく。それが次世代のゴルフです」
風を読み、高低差やグリーンの硬さをジャッジし、スウィングを調整して弾道をコントロールし、ピンにつける。プロの試合は感覚と技術、その双方が試されるが、その感覚を磨くために計測器を使っているようだ。
すごくレベルの高い話だが、アマチュアゴルファーの参考にもなるという。
「打つ前に距離を測定し、着弾した位置から逆算して実際に何ヤードの距離を打てたのかを確認したり、何ヤードランしたのかを確認するといいですね。そうすることによって打ちたい弾道で打ちたい距離が打てたのか、ライや風、高低差の影響がどれくらいあったのかということが確認できますから。それを積み重ねることによって感覚を磨けると思います」
次世代のゴルフでは、感覚的な部分をテクノロジーで可視化することでミスの原因を突き止め、ショットの精度向上に役立てる。世界レベルのゴルファーたちは、最先端のテクノロジーを利用して、さらに先へと進んでいるようだ。