プレーヤーがSNSにマスターズの思い出を投稿。ビッグ3として凌ぎを削ったライバル、アーノルド・パーマーとのとっておきのエピソードを語っている。
朝もやのオーガスタ。ギャラリーのいない静寂に包まれたマスターズ初日、プレーヤーはジャック・
ニクラスとともに今年も大会の名誉スターターを勤めた。なにからなにまで変則だった11月のマスターズだが好々爺の胸中には数々のシーンが甦っていた。
マスターズ3勝のプレーヤーが初めてグリーンジャケットに袖を通したのは1961年。その年優勝を争ったのはいまは亡き朋友パーマーだった。
「18番では2人ともバンカーにつかまった。でもこちらのほうがライが良かったのでフェースを開いてボールを左に置くオーソドックスなスタイルで球を上げて寄せることができた」と語ったプレーヤーは相手が置かれた状況も冷静に把握していた。
「パーマーのボールは若干砂に埋まっていたのだが、そのとき彼はフェースを開いてバンカーから脱出しようとしたんだ。これが間違いでね。グリーンはピンに向かって下り。ライも悪い。そういうときはフェースを閉じて球を右に置いて上からヘッドを振り下ろすのが正解。でも彼はそうしなかった。案の定ボールは勢いよくグリーンの外まで転がりダブルボギー。で、自分に初優勝が転がり込んだ」
そしてこう付け加えた。「そもそもパーマーはバンカーが上手くなかったんだ。キャリアを通してね」。ん? マスターズ4勝、メジャー7勝のレジェンドがバンカーが下手だったとは……。
しかしもちろんその弱点を凌駕するほどの強みがパーマーにはあった。
「その前の年(60年)のことも忘れられない。残り3ホールで自分が2打リード。で、16番(パー3)がやってきた。自分はバーディチャンスにつけたがパーマーはグリーンに乗らず右のフリンジ。キャディと“あそこから寄せてパーで上がったのは見たことがないよな”と話しもんだ。しかーし、ヤツは時速100キロくらいに感じほど超高速アプローチでブン! 見事に寄せたよ。あれはすごかった!」
続く17番でパーマーは6メートル、最終18番でも2メートルのバーディを決めプレーヤーを逆転、マスターズ2勝目を挙げた。
「上がり3ホールの攻撃的なプレー。それがファンを夢中にさせた彼の真骨頂だった。あのシーンはいまでも1カ月に一度くらい思い出す。“アメリカには神がいる”と思ったもんだ」
バンカーは下手だが攻撃プレーにおいては神クラス。生涯のライバルだからこそ語れるマスターズの貴重なエピソードだ。