1985年にブリヂストンが発売した「オールターゲット11」というクラブがある。これは、ウッドとアイアンを明確に分けず、ドライバーからアイアンまで、違和感なく同じように打てるように設計されたもので、上の番手はウッドっぽく、下の番手に移るにつれて、徐々にアイアン的な形状になる。
そうすると、5番、6番、7番あたりのクラブはウッドとアイアンの中間のような、今でいうユーティリティ形状になる。このモデルは一つの例だが、かなり昔からウッド形状の方が、ボールは上がりやすくやさしいという認識はあったようだ。今日のユーティリティの普及も、ロングアイアンよりも明らかに良い結果が出る確率が高いのが要因だ。
それほど飛距離の出ない女子プロは、アイアンの上の番手をユーティリティにして、バッグには3本前後入っていることも少なくない。複数本入れることで、アイアンセットのような距離の流れがユーティリティでもできるので、彼女たちはそれでアイアンのように球を操り、グリーンを狙っている。
我々、一般的なアマチュアにとっては、ロングアイアンはおろかミドルアイアンだって難しい。一番カンタンかもしれない7番アイアンであっても、コースでナイスショットしている確率は、それほど高くはないかもしれない。そんなニーズもあってか、ピンの新製品「G425ハイブリッド」では、前作までの6UT(ロフト角30度)の下に、あらたに7UT(ロフト角34度)が追加されている。
ロフト角が30度といえば、現在の7番アイアンの平均的なロフト角と言えるだろう。34度なら中上級者向けモデルの7番アイアン相当だ。とはいえ、実際にロフト角34度の7UTを打ってみると、シャフトが長いので、7番アイアンよりは飛距離は出しやすい。1番手くらいは飛距離が出せそうだ。
ウッド型の形状ながら、今までに見たことがないほどフェース面は上に向いているので、構えると違和感を感じるゴルファーもいるかも知れない。いわゆるユーティリティというよりも、チッパーのような見た目になる。この形状に慣れないと、使うのはちょっと苦戦するかもしれない。
一方、結果は非常に良好で、とにかくボールは上がるし、曲がらない。許容性も抜群で、安定して同じような結果になりやすい。6番や7番アイアンと比べても、明らかにやさしいと言って良いと思う。特にストロングロフトのアイアンで、ボールがライナーになりやすい人などには、飛距離が出て、高くあがってグリーンで止まる良いソリューションになりそうだ。
あえて、デメリットを上げるとすれば、セットの流れを作りにくいことだろう。アイアンセットであれば、セットというくらいだから番手なりに飛距離やボールの高さの階段は出来る。しかし、上をUTにしてしまうと、その狭間で流れにギャップが出来る事がある。たとえば、強いアゲンストが吹いている状況では、6UTや7UTは高く上がる分、風の影響を強く受けて、飛距離がどっと落ちてしまい、下の番手のアイアンで打ったほうが、飛距離減は少なかったりする。競技志向のゴルファーであれば、これだけでも使用がためらわれるところだ。
もうひとつ難しいのは、スペック選びだ。アイアンの流れで打ちたいので、アイアンと同じシャフトにしたら、意外と同じ感じで打てない。そこで少しシャフトを軽くしたりしてみるわけだが、また挙動が変わったりして、気持ちよく振れるスペックを探すのは、存外難しい。これはヘッド形状が大きく違うのが原因で、同じシャフトに揃えていても、アイアンとUTが同じ感じで打てない人は多いはずだ。
とはいえ、そんなデメリットを遥かに上回るやさしさと安定感を持っているのが、大ロフト角UTだ。現在は、「IX-001」アイアンとのロフト角を揃えて、コンボ使用しやすくしたフォーティーンの「UX-001」や、初代モデルから、大ロフトをラインナップしているキャスコ「パワートルネードUFO」、さらにお助けクラブとして人気のプロギア「Q」など、徐々にモデルが増えている。今後は、より使い勝手に優れたモデルも各社から登場するだろう。