昨シーズンは渋野日向子が全英女王に輝くなど98年度生まれの黄金世代の活躍が目立った。今年はさらに若返り、2000年度生まれのプラチナ世代、そのさらに一学年下の笹生優花らの活躍も目立つ。
「プロの壁」など存在しないかのようにデビューと同時(ときにはアマチュア時代から)に大活躍を見せる彼女たち。そんな若手の大活躍を前に「自身が壁になる意識はあるか?」と問われた上田桃子が、興味深いコメントをしている。
「自分たちも出てきた時が一番良かったので、今の状況をあまり不思議には思っていないですね。実際に自分も試合をやるごとにどんどん上手くなっていく経験もして、やったらやった分だけ強くなっていることを感じていました。だから、去年の渋野さんもそうですけど若いときはガンガンと行ける強さを持っているので羨ましいなと思うことが大きいです」(上田桃子/大王製紙エリエールレディス3日目)
たしかに、1986年生まれの上田桃子のデビュー時の勢いはすごかった。ツアーに本格参戦した2006年の優勝こそないものの、07年にはツアー5勝を挙げるなど大活躍。日米共催のミズノクラシックで勝利し、国内では21歳156日の史上最年少賞金女王となっている。国内で無双し、米ツアーで勝ちとまるで昨季の渋野日向子のような活躍ぶりだ。
デビュー年から活躍した選手といえば、なんといっても上田の一学年上の宮里藍だ。2003年、高校3年生のアマチュア時にツアー優勝を果たすと、2004年のルーキーイヤーにいきなり5勝。翌年にも6勝を挙げ、その年の米女子ツアーの予選会を2位に12打差のぶっちぎり1位で通過して見せた。アマ優勝してプロ転向後即活躍という意味では古江との共通点が、高校卒業後即活躍という意味では、今年の笹生と共通点がある。当時の“藍ちゃんフィーバー”はまさに社会現象だった。
その宮里のライバルといえば横峯さくら。2004年のプロテストに合格すると、わずか数試合でシード権を獲得。06年2勝、07年3勝を挙げ、2009年には賞金女王に輝いている。
上田・宮里と横峯のその後の成績の推移を見てみると、20代で前半で米ツアーに挑戦した上田と宮里は、米ツアーの高い壁に阻まれた苦しい時期を経験している。宮里はそれを乗り越え世界ランク1位にまで上り詰め(2010年)、上田は国内ツアーに復帰後、トッププロとして息の長い活躍を見せているのは周知の通り。今年は全英女子オープンで6位と日本人最上位に入って見せた。
上田や宮里よりもさらに早いタイミングで米女子ツアーに挑戦(高校在学中に予選会に挑戦し、通過)した畑岡奈紗も、米女子ツアー参戦初年度の2017年はなかなか成績が出なかったが、同年の予選会をトップ通過すると2018年、19歳162日の日本人最年少で米ツアー優勝を果たしている。
一方で、1994年生まれの鈴木愛のように国内に専念している選手の場合はどうだろうか。ツアーに本格参戦した2014年に2勝。翌年は優勝こそないもののトップ10入り12回と安定感を見せ、2017年、2019年には賞金女王に輝いている。
このように見ていくと、宮里以降の選手たちは、デビュー前後からいきなり複数回優勝を挙げていて一気にトップレベルまで到達していっていることがわかる。そして、宮里、上田のように米女子ツアーで壁にぶつかり、それを乗り越えて円熟味を増していく選手もいれば、鈴木愛のように国内で圧倒的な強さを見せていく選手もいる。いずれにしても、デビュー時に強い輝きを放った選手は、環境の変化による苦戦やスランプを経験しても、それを乗り越える強さを持っていることがわかる。
キャリアの一歩を踏み出したばかりの若手たちの今後さらなる活躍を期待したい。