曲がらないブレないと謳う大慣性モーメントのヘッドに、なぜ可変ウェート調整機能が装備されているのだろうか? 曲がらないなら必要ないのでは? その理由を、ギアライター高梨祥明が考えた。

大慣性モーメントヘッドが生み出す“許容性”とは?

ミスヒットに寛容な道具ほど、買う前に慎重に選ばないといけない。そう繰り返し書いているが、そのココロは“慣性モーメントが大きなヘッドほど、ダウンスウィングでフェースを開いてしまうとインパクトまでにスクェアに戻すのが困難だから”である。これはヘッドの慣性モーメントが大きくなると、プレーヤー側の小手先の調整が利きにくくなる、ということだ。

一度オープンフェースにしてしまうと容易に戻せないからこそ、最近ではそもそもフェースを開かないスウィングがもてはやされたりする。PGAツアーで戦うパワーヒッターたちでさえも、スウィング中に開いたフェースを自力で戻すのは容易ではない。そのことを新スウィングが教えてくれるのではないだろうか。

画像: PGAツアーで使用者急増のタイトリスト『TSi3』も可変ウェートシステム搭載。高い初速性能も狙った方向に打ち出してこそ活きてくる

PGAツアーで使用者急増のタイトリスト『TSi3』も可変ウェートシステム搭載。高い初速性能も狙った方向に打ち出してこそ活きてくる

大きな慣性モーメントが生み出す“許容性”は、フェースの開閉を補うものではなく、多少打点がバラついてしまっても、インパクトで向いたフェースの向きを“保って“くれることにある。簡単にいえば、開いたフェースを開いたままに保とうとする。それが大慣性モーメントの特性、やさしさなのである。

だからこそ、我々は自分が思うフェースの向きでインパクトできる道具(ドライバー)を慎重に選ばないといけない。なにも正解は目標にまっすぐとは限らない。とにかく自分のスウィングで意図した方向に打ち出せる。そんなドライバーを選んで初めて、ブレのない大慣性モーメントヘッドの恩恵を受けられるのだ。

弾道を操るのではなく、狙った方向に打ち出すためにウェート機能を使おう

現在、多くの最新ドライバーヘッドに動かせる“ウェート”機能が搭載されているが、これも意図した方向にボールを打ち出すための“フェース向き調節機能”だと考えればよいと思う。ドライバーヘッドのウェート可変機能は07年あたりから急速に発展した“革新”の一つだが、この役割も時代とともに変化してきた。

画像: 大慣性モーメント化を追求しているPINGも『G425』のMAXとLSTで可変バックウェートを採用。慣性モーメントの拡大とフェース向きの調節機能はセットのようなものだ

大慣性モーメント化を追求しているPINGも『G425』のMAXとLSTで可変バックウェートを採用。慣性モーメントの拡大とフェース向きの調節機能はセットのようなものだ

テーラーメイドが『r7クアッド』ドライバーを登場させたアジャスタブルウェートヘッドの草創期は、ウェートを動かすことでドローやフェード、ボールの高低を自在にコントロールできる万能的なイメージがあった。それも当時の400ccヘッドならば、あながち間違いのないアピールの仕方だったのかもしれないと思う。ヘッドの慣性モーメントが今ほど高まっていないからこそ、ヘッドの重心と打点との関係によって“ギア効果”が期待できたからだ。あえて芯ではない箇所でボールを打ち、インパクトの衝撃でフェース向きを変えることでボールの回転軸に傾きを加えたり、スピンを増減することができたのだ。

しかし、ご存知のようにヘッドの慣性モーメントアップが開発の主眼となった2010年以降、“ギア効果”で球筋を自在にコントロールすることは難しくなった。打点をズラしてもフェース向きが変わらないのが大慣性モーメントの許容性なのだから、当たり前である。また同時にゴルフボールもロングゲームでの低スピン化に成功し、ギア効果を使わなくても十分に適正スピンで飛ばせるようになってきた。“トウ側上目でヒットすれば低スピンになって飛ぶ!”といわれたギア効果ドローボールの時代はすでに終わっているのである。

画像: DRAWと書いてあってもドローボールが打てるわけではない。インパクトでフェースが左に向きやすいウェートポジションという意味である

DRAWと書いてあってもドローボールが打てるわけではない。インパクトでフェースが左に向きやすいウェートポジションという意味である

現在も動かせるウェート機能を持ったドライバーは数多いが、その役割は弾道を操るという上級者にしか理解できない複雑なものではなく、インパクトでのフェース向きを調整し、狙った方向にボールを打ち出すというシンプルなものである。最新ドライバーが生み出すブレのない、曲がりの少ない弾道を“狙った方向に向かって放つ”ために、ウェート可変機能を積極的に活用していただきたい。

写真/高梨祥明

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