国内女子ツアーは全日程を終了。新型コロナウイルスの影響で開幕が6月末にズレこむ変則スケジュールに、無観客での開催と異例尽くしのシーズンを、プロゴルファー・中村修が振り返る。

世界的に感染が広がった新型コロナウィルスは日本ゴルフ界にも大きな影響を及ぼしました。開幕戦は6月に開催された「アース・モンダミンカップ」では、無観客試合、インターネット中継、私たち報道関係者もごく限られた人数のみの入場制限のため会見はリモート会見と今では当たり前になりましたが、当時は誰もが戸惑いながらの対応になりました。

そんな異例のシーズンで、とくに私が感心したのがルーキーたちの活躍です。3勝を挙げた古江彩佳選手、2勝を挙げ賞金ランクトップで2020年の戦いを終えた笹生優花選手。そして初優勝を果たした西村優菜選手は結果も素晴らしいですが、驚いたのは彼女たちの落ち着いたプレーぶり。試合に臨む気持ちや、勝負どころでもプレーがブレないメンタルは、ツアールーキーとは思えませんでした(古江選手は昨年すでにプロ転向しているので、また少し事情が異なりますが)。

画像: 今シーズン活躍した古江彩佳(左)、笹生優花(中)、西村優菜(右)(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行)

今シーズン活躍した古江彩佳(左)、笹生優花(中)、西村優菜(右)(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行) 

古江選手、西村選手はナショナルチームで国際試合の経験を積み、アマチュアとしてツアーにも参戦していますし、笹生選手もフィリピン代表としてアジア大会で金メダルに輝くなど、実績を積み重ねています。男子ツアーでもアマチュアの活躍が目立ってきていますが、彼女たちの活躍はプロとアマチュアの境界線がますます曖昧になる、新しい時代の到来を予感させてくれるようです。

また、6月までズレた開幕に代表されるように、今年は例年とは異なるスケジュールでしたが、それもプラスに働きました。ルーキーは、とかく毎週毎週試合が開催されるスケジュールそのものの対応に苦しむもの。しかも、春先の難しいコンディションの試合がなく、芝が最高の状態からのスケジュールとなったことも彼女たちにとっては追い風になったと思います。もちろん、その追い風を受けて一気に高みにのぼることができたのは、彼女たちの実力あってのことです。

一方で、今季思うように成績が出せなかった選手もいます。12試合で8試合の予選落ち、1試合で棄権と彼女の実績を思えば信じられない成績となった成田美寿々選手はその一人。しかし、彼女にとって最終戦となった大王製紙エリエールレディスで今年初めて4日間をプレーし、今年ベストの「68」というスコアも出しています。2021年はきっと強い姿を見せてくれると思います。

もう一人、来季の注目選手はやはり渋野日向子選手です。まさかの未勝利で今年を終えることになりましたが、苦しい中で取り組んできたことは実を結びつつあり、とくにシーズン後半では復調した姿を見せてくれました。手応えを感じた状態でオフに入れるのは、彼女にとって良いことだと思います。

画像: エルエールでは5位、リコーカップでは3位タイと勝利こそつかめなかったもののシーズン後半で好成績を収めた渋野日向子(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行)

エルエールでは5位、リコーカップでは3位タイと勝利こそつかめなかったもののシーズン後半で好成績を収めた渋野日向子(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行) 

ほかにも数え上げればキリがありませんが、開幕戦を制した渡邉彩香選手や、昨年4月の出産を経て今年ツアーで活躍している若林舞衣子選手などの復活・復帰も印象的です。原英莉花選手の国内メジャー2連勝、畑岡奈紗選手の世界トップレベルでの活躍、ベテラン・上田桃子選手の全英女子オープンでの躍動、河本結選手の米ツアーで苦しみながらも頑張る姿……振り返れば、多くのプロたちがコロナ禍の2020年も女子ゴルフ界にたくさんのニュースをもたらしてくれました。

画像: 5年ぶりに優勝を挙げた渡邉彩香(左)、出産後ツアー復帰した若林舞衣子(左)も今シーズン活躍した選手だ(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行)

5年ぶりに優勝を挙げた渡邉彩香(左)、出産後ツアー復帰した若林舞衣子(左)も今シーズン活躍した選手だ(写真は2020年の大王製紙エリエールレディス 撮影/岡沢裕行)

国内最終戦の「LPGAツアー選手権リコーカップ」で渋野選手が口にした「後ろを向いていては前に進めない」という言葉。当たり前ですが、その通りだと感じます。今年活躍した選手も、不本意だった選手も、きっと前を向き、来シーズンに向けてオフトレに励むに違いありません。

と、その前に12月10日から始まる全米女子オープンには16名もの日本人選手が出場資格を得ています。2020年を締めくくる大会でどんな姿を見せてくれるのか、しっかりと見届けたいと思います。

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