奥も横もダメ、手前からしか寄せられない
「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の会場となる東京よみうりCCは、ゴルフを国際レベルに引き上げるべく井上誠一設計で1960年に着工した歴史があります。1966年開催の「カナダカップ」ではアーノルド・パーマーとジャック・ニクラス組が圧倒的な強さで優勝するなど数多くの国際大会の舞台になったコースです。とくに最終18番ホールのパー3は数々のドラマを演出した名物ホールになっています。
やや打ち下ろしで227ヤードの表示。奥行き35ヤードと縦長な長方形を少し右に傾けた「レダン」と呼ばれる手法で設計されています。グリーン左手前と右横にバンカーがあり、グリーン面は花道から少しだけ砲台になっています。そして奥から手前に向かって傾斜があり、約12.5フィートというトーナメントならではのスピードが難易度をさらに上げています。
初日のピン位置は手前から14ヤード、左から9ヤード。30名のトップクラスの選手がプレーし、バーディはわずかに2名だけ。左横からのアプローチを絶妙なタッチでチップインした小田孔明選手と、UTを使ったティショットがピン奥から傾斜で戻りピンそばに付けた金谷拓実選手でした。
グリーンに乗せたのは11名でバーディ1名、パー9名、ボギー1名。、残り19名はグリーンを外しバーディ1名、パー12名、ボギー6名という結果でした。30名のうちバーディ2名、ボギー7名ですからいかに難しいかがわかると思います。よみうりグループ3コースの統括グリーンキーパーを務める大橋敬之氏に、このホールの難しさと攻略法を聞きました。
「18番は奥からの傾斜が強いので、カップの真上か真下を外すと必ず曲がるラインが残ります。ピン手前に乗せてもバーディが少ないのは上りでも微妙に曲がるラインが残るから。とくにカップの横からは大きく曲がるラインになるので、できるだけピン手前に置くことがセオリーになります」(大橋)
まとめれば、奥もダメ、横もダメ。ですが、さすがはこの舞台に駒を進める選手たち。ピンをオーバーする選手は1人もいませんでした。ピン横からアプローチを打つ場合でも、曲がりを計算しつつ、高く上げたり低くスピンを効かせたりと技術を駆使して手前につけ、パーで切り抜ける姿が多くみられました。
アマチュアゴルファーの方が、もしこの難ホールをプレーするとしたらどうすべきでしょうか。元研修生の経験を持つ大橋キーパーがこうアドバイスしてくれました。
「グリーンに乗せない距離感で手前にボールを置き、ピンをオーバーしないようにアプローチで寄せて2パット。ボギーで切り抜けたらよしではないでしょうか。ピンをオーバーすると下りのパットでグリーンを出てしまうこともよくありますから、『手前から』に徹すれば、パーで上がれることもあると思います」(大橋)
このホールは過去にいくつものドラマが生まれています。2013年のチップインパーで悲願の初優勝を挙げた宮里優作選手を思い出す人も多いはずです。最終日、トップでここまできても後続と2打差くらいであればまったく気の抜けません。
まだ試合は始まったばかりですが、今年も最後まで緊張感ある試合が見られることと思います。2020年の有終の美を飾るのは誰か? 最終ホールまで目が離せない試合展開を、「自分だったらどんなクラブで、どう攻めるかな?」そんな風に考えながら観戦すると、また違った面白さがあるかもしれませんね!