インドアはもちろん、最近ではいわゆる「打ちっぱなし」の練習場でも弾道計測器やシミュレータを導入する施設が増加傾向。ヘッドスピードにボール初速、打ち出し角、スピン量、そしてもちろん飛距離など、気になるデータはいろいろあるが、プロゴルファー・中村修は「打ち出し角、そしてスピン量に注目してほしい」と言う。
「やっぱり、ヘッドスピード、ボール初速、そして飛距離っていうところに目がいってしまうと思うんですが、もっと速く振ろう! 飛ばそう! と思うと力みにつながっちゃいますよね。それに、初速を高めるのは一朝一夕にはいきません。それよりも、スピン量や打ち出し角といった項目に注目すると、より効率よく飛距離を伸ばせると思います」(中村、以下同)
飛びの三要素と呼ばれるのが、ボール初速、打ち出し角、そしてスピン量。そのうち初速は「足の速さ」のようなもので、高めるためにはトレーニングやスウィング改造などの地道な努力が必要となる。一方で、スピン量や打ち出し角はそれに比べればチューニングしやすいと中村は言う。
「たとえば、アマチュアの方で多いのが打ち出しが低く、スピン量が多いケース。プロの場合、打ち出し角15度前後、スピン量2000回転前後がざっくり理想値というイメージですが、アマチュアの方の場合、たとえば打ち出し角が7度前後、スピン量が4000回転前後ということもままあります。この打ち出しを10度台まで引き上げて、スピン量も3000回転前後まで下げてあげると、飛距離は10ヤード単位で変わってくると思います」
中村によれば、アマチュアが低打ち出し・高スピンになる理由はカット軌道。ターゲットラインの外側からボールを切るような軌道のことで、このような軌道で振る場合クラブは急角度で降りてくる場合が多いため打ち出しが低くなりやすく、軌道に対してフェースが開いているためスピン量が多くなりやすい。ちなみに、球筋としては圧倒的にスライスが出やすい。
「スウィングは人それぞれですが、このような傾向がある方は、まずアドレスを見直してください。頭の位置はボールよりも右におき、クラブの最下点は頭の正面になるイメージです。真上からボールを見るのではなくボールのやや右から見ることが大切です。そうすることによってダウンブローに入っていた入射角をレベルからアッパー軌道に変化させることができるはずです」
まずはこのアドレスの構え方を試して欲しいと中村。その上でそれでもカット軌道が強くスライスや引っかけの度合いが多い場合は、スウィングの『面』を整えるというビッグマイナーチェンジが必要になるという。
「スウィング面をカット軌道からインサイドアウトやインサイドインに変更するのは体の使い方や意識に大きな変更を受け入れる必要が出てきます。まずは極端に、ターゲットに対して斜め45度右を向いて構える。そして、そのまま何球か打ってみてもらいたいんです。このように構えると、ターゲットに対してカットに振るのは非常に難しくなります。この状態からはじめて、少しずつスクェアスタンスに戻していくんです。このように、ターゲットラインの外から入るスウィングの『面』を徐々に右に向けてあげる。こうしてスウィング軌道が整うと軌道とフェース面が揃うことでスピン量が抑えられ、入射角度もゆるやかになってきますから打ち出しも高くなってくると思いますよ」
打ち出し角が低いからアッパーブローに振ろう! とか、スピン量が多いからロフトを立てて当てよう! などとするのは残念ながら逆効果になりやすいので注意が必要。まずはアドレスを見直しスピン量と打ち出し角にいい影響が出れば、それはこの取り組みが上手く行っている証拠だ。そして、ドリルに取り組む前よりもふたつの数字が良化していれば、結果的に飛距離もグンと伸びているはず。弾道計測器やシミュレータがある練習場では、ぜひスピン量と打ち出し角にご注目を!