「最初は気持ちの持っていき方が難しくて。後半は連戦で、今度は体力面できつかったです。『来年もある』という甘い考えになってしまっていたんですよね(編注:コロナ禍の影響で、2020年シーズンと2021年シーズンは合わせてひとつのシーズンとなっている)。“モチベーション“と”体力“この2つのリズムのとり方が思うようにいかないなという葛藤がありました」(田中瑞希、以下同)
新型コロナウイルスの影響により試合中止が続き、いつ開幕するのかわからない状況だったからこそ気持ちの“作り方“や”持っていき方“に苦労をしたと田中は振り返った。そんな中でも開幕戦「アース・モンダミン」では3位タイと優勝争いに絡み、賞金ランク30位(田中は26位)までの選手しか出場できないLPGAツアー選手権リコーカップに初出場できたという事実が「去年と比べて成長を感じている部分」だと話す。
試合中止が続いた当時は「正直この先も試合がどうなるかわからないという意味では不安」と語っていたが、ひとまず年内を完走した今は、最終戦にまで駒を進めた現状を「去年じゃ考えられなかったから1年で成長できたのかな」という。
コロナ禍で開幕は6月までズレ込み、その後も中止となる試合があるスケジュール。女子プロたちの胸に去来するのは、ひとまず一年の戦いが終わった安堵感のようだ。
今シーズンといえば田中より下の世代にあたる古江彩佳が3勝、笹生優花が2勝と勝利を挙げるなど活躍していた。そんな下の世代の活躍はどのように感じているのかも聞いてみた。
「古江さんと笹生さん2人ともいつも変わらない、安定感が凄い印象で、雰囲気もゴルフの内容も下の世代とは思えないですね(笑)。だけど、同世代だけじゃなくて下の世代が活躍していくことは私にとって刺激にもなるし、頑張ろうという原動力にもなるかなと思います」
さらに同世代でいえば原英莉花、小祝さくらの活躍が目立ち、渋野日向子、畑岡奈紗、河本結は米ツアーを主戦場として戦っている。
「素直に凄いなって思うし、自分も早く勝ちたいし、アメリカでもやってみたいなという風に思いますね。海外は小さい頃からの夢だったので現役を引退するまでに1回は行きたいし、戦ってみたい場所ではあります。日本の試合で活躍できたら海外の出場権を得られることもあるので、頑張りたいな、と思います」
海外のスケールの大きさで同世代が戦っている様子から「自分もその舞台でやりたい」という思いが一層強くなったのだとか。それでもまずは「日本ツアーで初優勝を目指す」と自分の足元を見失うことはない。
「まだどうなるかはわからないですけど、来年は1年間試合ができる状態になる……なってほしいと思うので、また体力づくりをイチからしていって、しっかりレベルアップして優勝できるようにこのオフで練習していきたいです」
来年も、151センチの小さな体をフルに使ってツアーを戦い抜く熊本女子・田中瑞希と、女子ツアーの戦いに注目だ。