欧州ツアーとサンシャインツアー(南ア)共催の南アフリカオープンで地元出身のクリスティアン・
ベザイデンホウトが優勝を飾った。前週のアルフレッドダンヒル選手権に続く2週連続ツアー通算3勝目を5ストロークの大差で達成した26歳。数奇な運命を辿った彼へ、これは神様の粋な計らいなのか?

「南ア人にとって(ナショナル)オープンに勝つことは大きな夢。現実じゃないみたい!」と喜んだベザイデンホルト。欧州ツアーでの2週連続Vは17年のジャスティン・ローズ以来の快挙である。

しかし彼のこれまでの人生は涙なくして語れない。

それは2歳のある日。記憶さえない昔のことだ。両親と一緒にスーパーに行った彼は床にソーダの瓶があるのを見つけた。それを口にした途端意識を失った。瓶の中身はソーダではなくネズミ駆除の劇薬だった。

救急搬送されICUで数週間を過ごした。幸い命は取り留めたが神経に障害が残った。吃音になったのはそのせいだ。

画像: 「南アフリカオープン」を制したクリスティアン・ベザイデンホウト(写真はGettyImages)

「南アフリカオープン」を制したクリスティアン・ベザイデンホウト(写真はGettyImages)

ものごころつくと人前で喋るのが苦手になった。なにか喋ろうとする心拍数は上がり冷や汗が出る。「どもって友達にからかわれるのがすごくイヤだった」。4歳からゴルフを始めた。プレー中は喋らなくてすんだが8歳から地元のトーナメントに出始めると人前で話さなくてはならない状況が訪れた。

「息ができなくなるんだ」。パニック症状。そんな彼に医師はベータブロッカー(交感神経β受容体遮断薬)を処方した。症状は改善されたがそれが思わぬ事態を招くことになる。

「14年の全英アマに出たときドーピング検査に引っかかったんだ。まさか10年以上処方されてきたベータブロッカーに禁止薬物が含まれているとは思いもしなかった」

厳罰が下された。2年間の競技出場停止。母国の代表として出場する予定だったアイゼンハワートロフィー(世界アマ)の道も閉ざされた。夢だった舞台から締め出され失意の底に沈んだ。

しかし事情が事情だけに情状酌量が適応され出場停止は9カ月に短縮された。今度こそ夢だったプロの世界に挑戦するときがきた。最初はヨーロッパの下部ツアーが主戦場だった。国から国へ、たったひとりで転戦する日々は辛かった。ゴルフ自体というより慣れない環境での孤独な戦いに心が折れ「
やめたい」と真剣に思った。

QTに受かって欧州ツアーの出場権をつかんだのが17年。すると3年目(19年)スペインで行われたアンダルシアマスターズで地元のヒーロー、ジョン・ラームを破ってツアー初優勝を飾った。さらに直近の2試合で連続優勝といま乗りに乗っているのが難しい名前を持つこの青年なのだ。

ベザイデンホウトはいま薬に頼らなくても「パニックにならないし吃音もましになった」という。苦労の末自らの手で勝ち取った2週連続Vという貴重な勲章は諦めず挑み続けた彼に相応しい。

This article is a sponsored article by
''.