「全米女子オープン」の2日目を終え渋野日向子はスコアを4打伸ばし2位と3打差の7アンダー単独首位で決勝ラウンドに駒を進めた。今年最後のメジャー2日目の模様を、プロゴルファー・中村修がレポート。

スコアボードを見て「夢」かと思った

ラウンド後のインタビューで「アテスト後にスコアボードを見たら一番上に名前があったので『夢』かと思った」と話した渋野日向子選手。全米女子オープンの舞台でドライバーを振り切り、池に近いピンを攻め、長いバーディパットも決める。

今シーズンなかなか思うようなプレーができなかったのが嘘のようなプレーを見せてくれています。今シーズンの浮き沈みは、すべて無駄になっていない、必要なことだったんだ、とこの2日間のゴルフを見て思った人も多いのではないでしょうか。私もそのうちの一人です。

2日目は時折雨がぱらつき、風もあるコンディションでしたが、懸念されていたほどの悪天候にはなりませんでした。そんな中、攻めるだけではなく、たとえば池がらみの16番ホールのピンに対してはしっかりと逆サイドに乗せるなど、しっかりとしたマネジメントが光るプレーぶり。

風やピン位置を考えながらプラン通りのプレーがフィールド(出場選手)の中で誰よりもできていました。その結果6バーディ2ボギーの4アンダー、トータル7アンダーとスコアを伸ばし2位と3打差で決勝ラウンドを迎えることになりました。

「昨日のゴルフはなかったことにして、初日と考えてやったことで伸び伸びできた」「自分の中で気持ちのコントロールができていると実感できる」ラウンド後の会見の言葉からどんな意識をもってプレーしていたかが読み取れます。

画像: 全米女子オープンの予選ラウンドを2位と3打差の7アンダーの首位で折り返す渋野日向子(写真 USGA/Robert Beck)

全米女子オープンの予選ラウンドを2位と3打差の7アンダーの首位で折り返す渋野日向子(写真 USGA/Robert Beck)

そして、ここまで調子が良くなった要因を上げるとしたら、というインタビュアーの質問にしばらく沈黙したあと「今までの自分を捨てることです。捨てたことかな。プロ一年目、プロになりたて、ゴルフ始めたてくらいの気持ちのほうがゴルフに対して成長できる、気持ち的にも成長できるなと思って、初心に返ったこと」と話しました。この言葉を聞いて、もう今季のスランプからは脱出できたんだと感じました。

今年の海外遠征時の記者会見で聞いた数々の発言からは、昨年の全英女子オープン制覇というとてつもなく大きな成果が重くのしかかっていたことがうかがえました。遠征中に何度も経験したドン底から、22歳の渋野選手は学び、ひとつひとつの出来事を成長の糧にしてきたのです。改めて大した人物だと感心するほかありません。

残り2日については「耐える、粘るゴルフが必要だと思うので、しっかりそこは徹底的に頑張りたい」と答えました。全米女子オープンの首位として追いかけられる立場の難しさもあるとは思いますが、渋野選手らしいプレーを見せてくれることでしょう。

一方の笹生優花選手は1バーディ1ボギーとスコアは伸ばせませんでしたが、スコアを落とさなかったことは大きいと思います。ショットでピン近くにつけたバーディパットを外しても粘り強くパーを重ねていました。アマチュアで出場し予選通過できなかった昨年から大きく成長したことを表していると思います。近い将来、米ツアーでプレーする姿を想像しました。残り2日で現地のメディアも驚くようなプレーを見せてくれるのではないでしょうか。

画像: 全米女子オープンの予選ラウンドを2アンダー6位タイで終えた笹生優花(写真 USGA/Chris Keane)

全米女子オープンの予選ラウンドを2アンダー6位タイで終えた笹生優花(写真 USGA/Chris Keane)

渋野、笹生以外に3オーバー47位タイまでに残り予選を通過を果たした日本勢は、2オーバーで畑岡奈紗、三ヶ島かな、稲見萌寧、3オーバーに岡山絵里、河本結、高橋彩華、比嘉真美子の9名。他に日本ツアーで活躍するイ・ミニョン(20位タイ)、ぺ・ソンウ(29位タイ)両選手も予選を通過しています。様々な条件を考慮しても11名の予選通過は日本ツアーのレベルを評価してもいいのではないでしょうか。

決勝ラウンドは、距離があってグリーンの奥行きが40ヤードもあるサイプレスクリークコースが舞台となります。渋野選手のメジャー2冠目という期待も膨らみますが、この2日間で十分成長した姿を見せてくれたので、もうどんなプレーを見せてくれても構いません。結果はともかく、彼女らしいプレーを期待します。

上位で予選通過した笹生選手は持てるポテンシャルを発揮して欲しいところ。もちろん残る他の日本勢の応援も忘れずに、寝不足覚悟で今晩の放送を楽しみたいと思います。

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