全米女子オープン最終日、渋野日向子はスコアを3つ落とし「74」でホールアウト。首位と2打差の単独4位で4日間の戦いを終えた。その戦いを、そして今シーズンの渋野の戦いをほぼすべてウォッチしたプロゴルファー・中村修が渋野のプレーぶり、そして今年一年を通しての「成長」を語る。

渋野日向子選手の4日間の戦いが終わりました。最終日は3オーバー「74」とスコアを落とし単独4位でのフィニッシュです。

前半は耐える展開。緊張と寒さから初日、2日目のように体が動かないように見受けられるなか、5番ホールで崖下からのミラクルパーセーブなどもあり、スコアを2つ落としながらも首位でハーフターンします。

画像: 全米女子オープンを単独4位で終えた渋野日向子(USGA/Robert Beck)

全米女子オープンを単独4位で終えた渋野日向子(USGA/Robert Beck)

その後10番、11番の連続ボギーで首位の座から陥落。しかし、13番のパー5でこの日最初のバーディがきて以降は、彼女らしいプレーが戻ってきたように感じました。もう少しだけ早くバーディがきてくれていれば……と、つい「タラレバ」を考えてしまいますが、言うまでもなく勝負にタラレバはありません。3オーバーという結果は、メジャー最終日首位スタートの重圧のなか、よく耐えたと思います。

プレーオフに残るには2連続バーディしかないという状況で迎えた17番をボギーとした直後の18番で見せた意地のバーディ、ボギーのあとにバーディ以上のスコアで上がる“バウンスバック“は、必ずや次につながると思わせてくれるプレーでした。

優勝は韓国のキム・アリム選手。普段は韓国ツアーを主戦場とする無名の選手ですが、まるで昨年の全英女子オープンでの渋野日向子選手のように、怖れを知らずに攻めるゴルフでバーディを量産。上がり3ホール連続バーディでの優勝は圧巻の一言です。

最終日に4つ伸ばしたキム選手が勝ち、2位タイには3つ伸ばしたコ・ジンヨン選手が入りました。6731ヤードから6399ヤードへと、最終日は距離が短くなったこともありますが、まるで男子の全米オープンのような厳しいセッティングのなか、それでも攻めてバーディを奪わないと勝てないのが今の女子メジャーのレベルなのでしょう。

渋野選手のプレーを振り返ると、初日、2日目はショットが絶好調で、バーディを積み重ねて行きましたが、3日目、そして最終日とプレッシャーから思うようなショットが打てないというなか、アプローチ、パター、バンカーショットに大きな成長を見せてくれました。アプローチするのが怖いと発言するほどの状態だったところから、よくぞここまで持ち直したなと感心します。持ち直したどころか、一枚、二枚上手になっています。ここに落とすしかないという落としどころに落とし、寄せるアプローチは、去年は見られないものでした。

画像: アプローチやパター、バンカーショットと随所に大きな成長が見られた(USGA/Chris Keane)

アプローチやパター、バンカーショットと随所に大きな成長が見られた(USGA/Chris Keane)

最終日は12番までノーバーディで4ボギーというストレスフルな展開でしたが、それでも気持ちを切らさずに耐えたことで、13番のバーディにつなげました。一度歯車が狂えばトップ選手でも「80」を打つ危険性があるこのコースで、狂った歯車が噛み合うまで耐えた精神力、気持ちのコントロールも成長した部分ではないでしょうか。

今年は大スランプを経験した渋野選手。予選落ちを喫しても記者会見には呼ばれ、涙をこらえながらも、必死に受け答えをしていた姿が印象的です。その辛い経験すらも、彼女は力に変えたのでしょう。メジャーで勝つことはできませんでしたが、そのような苦しい時期にコツコツ身につけた技術が世界の舞台で通用することを、今回の結果は示しています。

また来年。さらにその次と渋野選手のゴルフ人生は続いていきます。「ナイスプレー!」という一言を、2020年の全米女子オープンでの彼女のプレーに贈りたいと思います。

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