アゴの低いグリーン周りのバンカーから、高さを出さずに脱出し、トロトロと転がして寄せるバンカーショット。今回の全米女子オープンでは、渋野日向子がそんな妙技を駆使してパーセーブ(あるいはバーディ奪取)する姿が見られた。
バンカーというと、フェースを思い切り開いてソールで砂を叩き、高さとスピンでボールを止める……そんな印象があるが、あの球を上げないバンカーにはどのような意図があるのだろうか? プロゴルファー・中村修は言う。
「あれは、ヘッドスピードを上げずに打つ打ち方ですね。ある程度ピンまでが近いバンカーの場合、あのようにヘッドスピードを上げずに打つことで、距離感を合わせやすくなるんです」(中村)
フェースを開き、フルショットのような振り幅で打つ場合、高さも出るしスピンはかかるが飛びすぎたり、逆にボールの下を抜けてしまって飛ばなかったりと、距離感のコントロールが難しい。そのため、微妙な距離をコントロールしたい場合、あえてヘッドスピードを上げずに打つのだそうだ。
では一体、どのように打つのだろう?
「構え方は普通のバンカーショット同様、クラブフェースを開いて構えます。そこから、コックを使わずノーコック気味に、ヘッドで大きな『U』の字を描くようにスウィングします。スピンがかからないぶん、ターゲットの手前に落としてそこから寄せていくようなイメージになります」
アマチュアはインパクトでついゆるんでしまいやすく、ゆるむと脱出すらおぼつかない。小さい振り幅のなかでも、ゆるまず、かつヘッドスピードは上げすぎずにゆるやかな軌道でインパクトすることで、球を上げないバンカーショットは打てる。写真を見ると、ボールは高く上がっていないが、砂はしっかりと飛んでいる。
高度な技術で“砂イチ“を連発した渋野日向子。アマチュアゴルファーが真似できるかどうかはさておき、メジャーで優勝争いを繰り広げるだけに、さすがの技術だ。