海外メジャー「全米女子オープン」で単独4位と健闘を見せた渋野日向子。そんな渋野が全米女子のグリーン周りで見せた「2つのアプローチ」を、プロゴルファー・中村修が解説。

ピッチエンドランと“上げる”アプローチを使い分け

アプローチのバリエーション増加は渋野日向子選手が、オフに取り組んでいた課題のひとつでもありました。今回の海外メジャー「全米女子オープン」では、主に2種類のアプローチを使い分けて、グリーン周りを攻略していましたね。

画像: 2種のアプローチで全米女子オープンを戦った渋野日向子(USGA/Chris Keane)

2種のアプローチで全米女子オープンを戦った渋野日向子(USGA/Chris Keane)

一つ目はピッチエンドラン。渋野選手のプロ入り1年目である2019年は、このピッチエンドラン1本に絞ってツアーを戦っていました。アドレス時のボール位置は右足外側の延長線上、手元はボールに対して左側、体のセンター付近です。

画像: ピッチエンドランではハンドファーストに構え(左)、さらにその度合いを強めてインパクトする(中)。それによってロフトが立ち、打ち出しは低めになる(右)(写真は2020年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/姉崎正)

ピッチエンドランではハンドファーストに構え(左)、さらにその度合いを強めてインパクトする(中)。それによってロフトが立ち、打ち出しは低めになる(右)(写真は2020年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/姉崎正)

構えた段階からハンドファーストの形を作っていますが、画像A中を見るとアドレス時よりもさらに手元を飛球線側に出してインパクトしています。これによってハンドファーストの度合いが強まり、ボールの打ち出しが低くなっていますね。

ただ、全米女子オープンの開催コース「チャンピオンズGC」では、花道からのアプローチの場合はピッチエンドランも有効でしたが、それ以外の場面ではよほどピンが遠くないと使いづらいという印象でした。

そこで渋野選手がやっていたのが、球を柔らかく上げるアプローチ。3日目の18番の3打目や、13番パー5の3打目、バンカー越えのアプローチでも使っていましたね。

アドレスもピッチエンドランからガラッと変えています。まず、ボールを上げるためにフェースを大きく開いて構えていますね(画像B赤丸)。ボール位置は頭の真下に置き、左腕とクラブは一直線の状態になっています。ピッチエンドランのアドレスと比べると、ハンドファーストの度合いが強くないですよね。

画像: フェースを開いて構え(赤丸)、ボールも体のセンターに置き、ハンドファーストの度合いも強くない(左)。アドレスで作った手元の角度をキープし(中)、打ち出しもピッチエンドランと比べて高めだ(右)(写真は2020年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/姉崎正)

フェースを開いて構え(赤丸)、ボールも体のセンターに置き、ハンドファーストの度合いも強くない(左)。アドレスで作った手元の角度をキープし(中)、打ち出しもピッチエンドランと比べて高めだ(右)(写真は2020年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/姉崎正)

アドレスで作った左腕とクラブが一直線になる形をキープしたままインパクトし(画像B中)、その打ち出しを見てみると、ピッチエンドランと比べてボールが出ていく角度が明らかに違います(画像B右)。ボールをあまり上げ過ぎることもなく、スピンもかかったアプローチが打てていました。

今までは試合後の会見などで、アプローチに不安があるという旨のコメントも聞かれましたが、海外メジャーという大きな舞台でも怖がらず新たなアプローチに挑戦できるようになってきたことは非常に大きいですね。

加えて言うなら、国内最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」後に全米女子オープンに挑めたことも大きいでしょう。リコーカップの開催コース「宮崎カントリークラブ」のラフはティフトン芝で、チャンピオンズGCと似ていましたし、砲台グリーンのホールもありましたから、そこでの経験もプラスに働いているのではないかと思います。

アプローチの引き出し然り、スウィング然り、着実に成長していることを感じさせてくれる全米女子オープンでした。次の試合が待ち遠しいですね。

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