中村:2020年の女子ツアーを振り返ってみると、コロナ禍で開幕が6月の「アース・モンダミンカップ」まで伸びて、ベテランの渡邉彩香選手の復活優勝でシーズンが幕を開けました。
中井:彼女がベテランっていう立ち位置であること自体がすごいですよね、まだ27歳ですから。女子ツアーは20歳手前から20代前半くらいにピークがくるような印象です。
中村:宮里藍さんくらいからですかね、若くして活躍する選手が増えました。
中井:ギアが進化したことで、複雑な技術じゃなくて単純な技術でスコアを出せるようになったのが大きいですね。経験がモノをいう世界から、逆に悪い経験がないほうが強いくらい。
中村:渋野日向子選手が全英女子に勝てたのは、まさに「(悪い)経験がない」ことがプラスに作用したとも言われますね。今年3勝とブレークした古江彩佳選手も、すごくシンプルなゴルフをします。
中井:今は、技術が「10」ではなく「6」でも、6のなかで100%の力を出せれば十分にスコアは出せるんですよね。技術のフル装備が必要じゃなくなってる。そして古江さんはびっくりするくらいスウィングに悪いクセがない。インタビューを聞いていても、頭がすごくいいし、スマート。彼女に関しては、勝って当然という気がします。
中村:逆に、渋野選手の場合はツアーが開幕せずに時間が生まれたことで、やれることが増えちゃった。いわば、装備を増やす時間が意図せず与えられてしまったんですね。それで試合にいってみたら練習でできたことができない、結果につながらない。結果的には、全米女子オープンでの活躍で、すべて無駄ではなかったと思わせてくれましたが、彼女にとっては苦しい一年だったと思いますし、よく復調したと思います。
中井:実績的には前頭、小結なのに、横綱であることを求められてしまった。これってすごいプレッシャーで、どう対応していいかわからなくなりますよ。それは青木翔コーチも一緒だったと思います。
中村:2020年に活躍した選手でいうと、原英莉花選手も印象的でしたね。
中井:日本女子オープンでの小祝さくらちゃんとのデッドヒートは見応えがありました。ああいう試合を見せられると、男子プロとして「女子ツアーがうらやましい」って素直に思っちゃいます。
中村:ベテランVS若手というより、若手VS若手の構図のなかで見応えのある試合が多かった印象ですね。その若手を中心に全米女子オープンには19名が参戦して、9名が予選通過。日本ツアーのレベルアップを感じました。
中井:そう思います。半数が予選を通過したのは称賛されるべきだし、評価すべきだと思いますね。
中村:中井プロは、今年はどんな選手が活躍すると思いますか?
中井:僕は古江さんが継続的に活躍すると思います。下手な部分がありませんから。彼女の場合、勢い云々ではなくて、上手いから上にいる、実力がそのまま出ているというふうに思います。
中村:ほかには誰かいますか。
中井:同世代の安田祐香ちゃんですね。怪我が心配ですけど、アマチュアの実績は伊達ではありません。オフを利用して体力をつけて、古江さんの対抗馬として出てきて欲しい。ちょっと希望も入っていますが。それとやっぱり渋野さんですよ。古江、安田、渋野の3人衆に注目です。
中村:そこに加えるならば、やはり笹生優花選手ですね。彼女は近い将来アメリカツアーに旅立っていくんだと思いますが、今年はまだ日本が拠点。そしてもちろんツアーには鈴木愛選手、シン・ジエ選手っていう高い壁がいます。
中井:シン・ジエ選手、2020年はわずか8試合で2勝ですからね。
中村:渋野、原、笹生、安田、古江……あと新人戦で勝ったセキ・ユウティン選手といった若手が挑んでいく構図で、女子ツアーを引っ張っていくんじゃないでしょうか。
中井:挙げたらキリがないくらい、いい選手が多い。やっぱり女子ツアーは羨ましい(笑)。