「腰を回す」のではなく「右わき腹を押し込む」イメージ
渋野日向子のように小気味よく振って飛ばすためのポイントは、「トップからの切り返しのときの、一瞬の下半身の使い方にあります」というのは、渋野を指導する青木翔コーチ。
「まず前提として、渋野のスウィングリズムは『チャー・シュー・メン』。『チャー』で手元を飛球方向に押し出して(=フォワードプレス)スウィングのきっかけを作り、『シュー』でバックスウィングを上げていく。この時にウェートを右足に乗せます。そして、『メン』の時に、右足に乗っていたウェートを左足に移すために地面を踏み込みます」(青木、以下同)
そして左足を踏み込んだ直後に、左ひざを伸ばして地面を蹴り、切り返していく。「『メン』での動きは感覚的には『切り返した瞬間に跳ねる』みたいな感じです」と青木コーチ。この『メン』の動きがヘッドスピードを生み、それが飛距離に繋がるのだという。
そして切り返し以降は、右わき腹で押して行く感じで体を回転させていく。腰ではなく、右わき腹を押し込むところが青木式のポイントだ。
「僕はレッスンで、『腰を回せ』とか『肩を回せ』とか言わないんですよ。腰や肩は、体の構造上正しく動くべきところが動けば、それに附随して自然に動くものなので、意識して動かす必要はないんです」
ダウンスウィングで意識して腰を回すと、腰が必要以上に後ろに引けてインパクトで体が余計に開き、ひどいスライスに悩むことになったりする。しかし青木式の下半身の使い方なら、切り返しで左ひざを伸ばし、さらに右わき腹を飛球線方向に押し込む動きによって腰は自然に回転するので、結果として渋野のようにつかまったドローボールが打てるわけだ。
ただ、切り返しで左足を蹴り込む動きは飛ばしのエネルギーを生む一方で、蹴り上げる動きとともに上半身も伸び上がってしまい、トップしてしまうミスも出やすい。この問題に関しては「上半身と下半身の『境目』の意識を変えてみてください」と青木。
「インパクトで左足の蹴りと同時に体が伸び上がる人は、上半身と下半身の境目を『腰』と考えている方が多いです。境目を腰に設定すると、上半身は横にも前後にも動くので、インパクトで体が伸び上がってしまいます。でも、上半身と下半身の境を『鳩尾』に設定した場合は、胸椎は左右に回転はしますが、前後への可動範囲は腰に比べて少なくなり、切り返しで左足を蹴った時の体の起き上がりを抑えることができます」
踏み込んだ左足を切り返しで蹴り上げ、右わき腹を押し込むイメージで体を回す青木式スウィング。体の無駄な動きを省いて下半身を効率良く動かして飛距離アップを目指そう!
取材協力/PGST 写真撮影/野村知也