日本の一般ゴルファーにすれば、“今さら“感のあるドライバーの超長尺化
2020年シーズン、肉体改造を行ないツアー屈指のロングヒッターとしてゴルフファンの大注目を浴びたブライソン・デシャンボー。とくに弩級のドライバーショットを連発し、難攻不落の名門コースを攻略して優勝した全米オープン以降は、ゴルフファンだけでなくツアープレーヤーたちも飛距離アップに躍起だ。
デシャンボーが48インチ仕様を試し始めると、フィル・ミケルソン(47.5インチ)、ビクトル・ホブランが48インチをテストするなど、その影響は確実に世界のプロツアー界に広がっている。ドカーンと飛ばし、チョコンと寄せる。プロゴルフは、そんな飛距離重視のいささか大味なゲームにシフトしようとしているように見えるのである。
48インチドライバー。90年代の日本市場で注目された、とにかく飛ばしたいアマチュアゴルファーのための“飛ばし技”という印象がある。「YUASA14」、「ゲロンディ」、長尺用ビッグバットシャフトの「ワイドSYB」などの名作が思い浮かぶが、どれもクラブ設計家・竹林隆光さんが手掛けた飛ばせないアマチュアに夢を与えるための秘策だった。そんな日本での超長尺ブームから四半世紀余りが経った2020年、世界最高峰のプロツアーで今さら“長超尺ブーム”が起きるのだからわからないものである。
ドライバーの長尺化がなぜ飛距離アップの秘策となるかといえば、シャフトを長くすればヘッドスピードがアップするからである。いわゆる“遠心力”が働きやすいということになるだろうか。
しかし、日本市場では一時48インチまでいったものの超長尺化は定番とならずに終わっている。理由はもちろん、ゴルファーがうまくそれを使いこなせなかったからである。90年代の超長尺ドライバーはヘッド体積300cc程度で、長い、小さい、振り重たいの三重苦だったような気がする。
いくら長くすればヘッドスピードが上がるといわれても、身の丈に合わない長さのドライバーで常にスクエアインパクトできる技量はアマチュアにはなかったし、スウィング中にかかる負荷に耐え一気に振り抜いていけるパワーも持ち合わせてはいなかった。
よく考えると、飛距離不足に悩む(パワー不足に悩む)ゴルファー向けの飛距離アップ策として“超長尺“が効果的な方法だったのか? よく検証してみる必要があるだろう。物干し竿が振りにくいように、長ければ振りにくくなる、振るのに力が必要になるのは当然だと思うからである。
筋骨隆々!あのデシャンボーでさえ軽量ヘッドでなければ振り切れない!?
現在と90年代ではシャフトの軽量化と硬度や剛性コントロール技術に雲泥の差があり、今ならば長くしても振りやすいドライバーに仕立てることは可能だろうと思う。ヘッドも460ccまで大きくなり、48インチにしても小さく見えて不安になることもない。そういう意味では、ようやく超長尺ドライバーを使いこなせる道具にするための下地が整ってきたといえるのだ。
しかし、長いものは“振り重たい“、“コントロールしにくい“のはシャフトの軽量化だけでは解消できないものである。シャフトの先には相変わらず200g前後の重り(ヘッド)が付いており、長くすればするほどスウィング中に感じる重たさは増してくる。このため、トッププレーヤーの中にも長くするより短くしたほうがコントロールできるし、むしろ安定して速く振れるとして44インチ以下のドライバーを選ぶケースも珍しくはないのである。
デシャンボーが48インチで400ヤード飛ばした! と聞けば、マネしたくなるのも当然だが、デシャンボーがそのクラブを使う前に“肉体改造”をし、目に見えて体幹を強化してきたという事実を忘れてはならない。本当に“遠心力“が増大したのならば、ハンマー投げの選手のようにそれに負けないカラダを作ることが必要不可欠。ドライバーヘッドがこれまでと同じ重さであるならば、超長尺化と体幹強化はセットになってこないとおかしいのだ。
ちなみにマッチョになったデシャンボーでも、ドライバーのヘッド重量は175〜185gとかなりウェイトダウンしているという。彼でも、通常の200gヘッド+48インチではスピードアップできないのではないだろうか。鍛えていない我々一般アマチュアならなおさらだ。安易に長尺化だけをマネしてはいけない理由がここにある。
ヘッド重量が従来のまま200g前後であれば、長くするよりもむしろ短くした方が振り切れてスピードも出る場合もあるだろう。43.5インチドライバーを使うトッププレーヤーがいるように、ドライバーの長さはまさに“身の丈“に合わせるべき。超長尺を試してみたいなら、190g以下のヘッド、そして軽くてなるべく硬いシャフト。つまり、今までとは違う組み合わせを試していただきたい。