アウトサイドにクラブを上げるのは、現代の大型ヘッドと相性が良いから
ドライバーの大型ヘッド化に合わせ、最適なスウィングの形も変化を続けている。とりわけ現在PGAツアーのトッププロたちのトレンドとなっているのは、アウトサイド方向へテークバックしてトップ位置までクラブを上げていき、切り返しからダウンスウィングでインサイドから下ろしつつプレーンに乗せていくタイプのスウィングだ。
なぜこのようなスウィングをするプロが増えているのか、その理由をプロゴルファー・永井延宏はこう説明する。
「最新ドライバーは大型ヘッドとなり、重心距離・重心深度が長く・深くなっていることで、シャフト軸線とヘッドの重心が離れています。フェースが開いてしまうと、インパクトまでにスクェアに戻すのがかなり難しい。テークバックの軌道がインサイドになるとフェースが開きやすいため、アウトサイドからのループを描く軌道のほうが、大型ヘッドと相性が良いというわけです。近い将来はマシュー・ウルフのようにテークバックのオンプレーンにこだわらないスウィングが主流になるのでは? と考えています」(永井、以下同)
とはいえ“現代的なスウィング”を理論的に説明されてもアマチュアにとってはなかなか理解しがたいもの。自身の生徒にどうすればその感覚が伝えられるか……と悩んだ末に永井が編み出したのが、本稿の主題である「魚釣りドリル」というわけ。ところでこの魚釣りドリル、一体どのようにやるのだろうか?
「シャフトを模したスティックの先端付近にゴム紐を括り付け、その先にジンベエザメのぬいぐるみを取り付けたモノを用意しました。このゴム紐を結んでいる位置は実際のゴルフクラブのバランスポイント(重心位置)をイメージしています。これは、もともと私のYouTubeチャンネルの面白動画として準備していた道具で、このジンベイザメのぬいぐるみも娘からの借りものなんですが、レッスンに用いたら効果てきめんだったんです」
瓢箪から駒というか、いわばネタから生まれた本気のドリルというわけだ。このお手製練習器具で、ジンベイザメのぬいぐるみをどのようにコントロールして釣り上げるのかが、ゴルフクラブにかかる重力を可視化することにつながると永井は言う。
「レッスンをしていて重要視しているのがテークバックの始動。水中で釣り針に食いついた魚が、自分から見て左側(飛球線方向側)へ泳いで逃げていく様子をイメージしてください。その水中でバイトし左方向に逃げる魚を、身体を使って右側に引き戻しますよね。このとき、魚(=ヘッドの重心)はシャフトから見て左側にキープしながら、身体のチカラで引き戻す動きになりますが、それがアウトサイドにテークバックしていく感覚なんです。左に逃げる魚は、かなりの大物をイメージしてほしいです」
ターゲット方向に真っすぐ逃げようとする大物は手先の動きでは吊り上げられない、ジンベイザメ級の大物を体全体で釣り上げようとすれば、自ずとアウトサイド方向にテークバックを上げることになる。
正しく始動ができ、手元が右足外側の延長線上まで動いたあたりからコッキングを入れて、魚を水中から引き上げていくのが、次なるフェーズ。
そして、地面に対し左腕が水平となる位置でシャフトが垂直に立ったら、釣り上げてきた魚を背中側にリリースしていく動きが、「クラブを倒す」であったり「シャローイング」と言われる動きの仕組みだと永井は説明する。
「このジンベイザメのぬいぐるみを使ったドリルは、従来の『ヘッドの重みを感じる』といった教えとつながります。この世で一番強いチカラは重力です。重力と正しくコミュニケーションするスウィングが一番効率的で、それがPGAツアープロたちが採用している現代的なスウィングの正体というわけです」
ヘッドの重み(=重力)を感じられるようになるだけでも、上達への大きな一歩。永井が教えてくれた「魚釣りドリル」で使った練習器具ではぬいぐるみを使用しているが、ゴルフクラブにかかる重力を可視化できるもの(適度な重さのあるもの)ならなんでも良いため、練習器具を作るという手間はあるものの自宅にあるアイテムで「魚釣りドリル」は体感できそう。
ただ、試すならせっかくだから魚のぬいぐるみで試すのが、安全面を考慮しても良さそうな気がする。