左手の握り方のポイントは3本の指でクラブを支えることができるか
初心者ゴルファーが最初に覚えるべきは、アドレス(構え方)やスウィング(振り方)ではなく、まずグリップ(握り方)だというのは飛ばし屋プロ・高島早百合。
「ゴルフクラブの握り方=グリップには様々な種類があります。グリップは自分の体とクラブをつなぐ大事な要素で、握り方によってスウィングやその結果にも影響を及ぼしますから、まずは基本となるグリップの作り方をしっかり覚えておくことが重要なんです」(高島、以下同)
様々なグリップのバリエーションがあるなかで高島が最初に覚えてほしいというのは、グリップの基本となる、左手の甲がボールを打ちたい方向に対して真っすぐ向く「スクェアグリップ」と呼ばれる握り方だ。
「まずは正しくグリップするために、フェース面の向きに注意してください。構えたときにフェース面が打ちたい方向に真っすぐ向いている状態を基準にグリップを作っていくのが正解です。いくらグリップの握り方自体が正しくても、それに対してフェース面の向きが一定でなければ、クラブを握るごとにフェースの向く方向が変わり、スウィングの結果も変わってしまいますから」
高島が言うようにフェース面の向く方向を目安にするのも良いが、道具で補助するのも手のひとつ。たとえばゴルフグリップ(クラブの持ち手部分)には「バックライン」という一部がライン状に盛り上がった設計になっているものもある。バックラインがあることで、握ったときに盛り上がっている感触を手元で感じ、いつも同じ向きで握りやすくなるというわけだ。
正しい向きにフェースを合わせることができたら、さっそくクラブを握っていこう。ゴルフクラブは最終的に両手で握るが、主にクラブを支えることになるのは左手。後述するが、右手は左手を包むように握る形となるので、まずは左手の形から作っていくのが正解だ。
「まずグリップの真下(地面側)を向いている部分に、左手人差し指の第一関節から、中指・薬指の第二関節、小指の付け根の部分に沿うよう手元を合わせて、親指以外の4本の指でクラブを握ります。ちょうどこのラインに合わせることで、自然と指を中心にクラブを握る体勢が作れますよ」
4本の指の握る強さに関しては「小指、薬指、中指の3本の指だけでクラブの重さを支えることができる程度の強さがベスト。人差し指は添えるだけで、力を入れる必要はありません。クラブヘッドを宙に浮かせて、しっかり支えられているかを確認してみてください」と高島。
さらにこのとき、「指ではなく手のひらを中心に握っていないかに注意してください」と高島。正しく握れているかを確認するポイントは、「指の付け根付近とグリップの間に隙間ができているかどうかだ」という。
「正しく指を中心に握れていれば隙間はできませんが、手のひらを中心に握り込むと隙間ができて、3本の指でクラブを支えることができなくなってしまいます。すると、そのぶん親指に力を入ることになり、結果としてクラブをうまく走らせることができないグリップとなり、スウィングにも良い影響を与えません」
4本の指で握れたら、あとは親指をグリップの上部に添えるだけ。
「親指にもほとんど力を入れる必要はないです。実際にアドレスした際に、親指と人差し指でできた線が自分の右肩辺りを指しているのが理想ですね」
右手はどう握るのが正解?
続いて、右手のグリップの握り方を教えてもらおう。
「右手も左手と同じ要領で、中指と薬指の2本を、第二関節がグリップの真下を向いている部分に沿うように握っていきます。左手人差し指と右手薬指はぴったりくっつくようにしてください」
ここから右手小指をどのポジションに置くかには、大きく2通りあるという。
「まず左手人差し指・中指の上に右手小指を乗せる形をオーバーラッピングと言います。この握り方にすることで、右手を自由に動かしにくくなり、結果としてスウィング中に余計な動きが入りづらいです。また、インパクトでボールを押し込む感覚も身につきやすいですね」
一方、右手小指と左手人差し指を絡めて握る形をインターロッキングという。
「インターロッキングで握ると、両手の一体感が出てきます。余計な力が入らず、右手での操作もしやすい形となります」
では、オーバーラッピングとインターロッキング、どちらで握るのが良いのかという話だが「これについては正直個人の好みの範疇。それぞれ試してみて、しっくりくるほうで構いません」と高島。
「右手親指に関しては右手の生命線辺りで左手親指を包み込むように握りましょう。これでグリップの基本形は完成です。この握り方は一番飛ばせるドライバーから、グリーン周りでの寄せに使うウェッジまで、フルショットする場合はすべて同じグリップで大丈夫ですよ」
道具を用いるスポーツの中でもゴルフクラブは独特な握り方をするため、初心者のうちはまずグリップの形に慣れることが重要。「ボールを打たなくても良いので、とにかくクラブを握ってグリップの基本を確かめることが重要です。練習場に行けなくても、握るだけでゴルフ上達につながりますので、暇があればグリップしてみるのがオススメですよ」」と高島。
一方で、少し未来の話ではあるが、ある程度練習を積んでゴルフに慣れていくと、打ちたい球に合わせて知らず知らずのうちにグリップが少しずつ変化してしまうこともあるという。
「たとえば、ボールを右に曲げたくないと感じると右手が下側から握り込むような形になってしまったり、逆に右手を上から握り込みすぎてしまう、なんてことはアマチュアの方に多く見られます。前者は右わきが開きやすく、後者は右ひじが突っ張ってしまいアドレスで右肩が出てきてしまいます。どちらもスウィングに悪い影響を及ぼしますので、逐一グリップの基本に立ち戻ることが重要です」
初心者にとっても、ある程度慣れたゴルファーにとっても、グリップの基本は非常に重要。高島の教えを参考に、まずは自宅でクラブを握ってみるところから始めてみよう。