こんにちは、ケンジロウです。2021年がスタートしました。
みなさんもう練習にはいきましたか? 私は打ちっぱなしに行きましたが、さっぱり当たらず、シャンクが止まらず、今年も“球がつかまらないスタート”となってしまいました。
さて、今週発売中の週刊ゴルフダイジェスト2021年1月19日号では石川遼プロのインタビュー記事を掲載しております(表紙も石川プロです)。誌面に書ききれなかったものがたっぷりとあったので、その割愛パートを2回に分けてご紹介しようと思います。
インタビュアー佐藤信人記者(プロゴルファー)のマニアックな質問から始まり、二人のトークはまさにふか~いところへ突き進み、終わりの見えない戦い(!?)になりました。
新しくコーチをつけたこと、コーチと取り組んできたこと、そして石川遼独特のPGAツアー観などなど余すところなくお届けしますよ。
昨年追求していたのは「リピータビリティ」
佐藤:PCR検査は昨年何回やりました?
石川:10回以上はやりましたかね。アメリカでやるときは鼻での検査が多かったですね。全米プロ(8月6~9日)のときはアメリカ国内での2週間隔離があったのですが、2週間の隔離中にキットが送られてきて自分で検査もしました。ZOOMでドクターとやり取りしながら、遠隔で採取するんですよ。採取した容器を密閉して送り返すんです。その次の試合からは、アメリカ国内での隔離がなくなったのでだいぶ楽になりました。
佐藤:僕もキット送り返すのはだいぶやって、慣れたなぁ。もう見なくても唾液の量がわかるようになったぐらい(笑)。さて、新しくコーチ(田中剛氏)をつけましたが、コーチと昨年一緒に取り組んできたことを教えてもらっていいですか?
石川:田中コーチはデータをすごく重視する方で、データベースから答えを導き出してきます。自分は元々スウィング面でアドレスとインパクトの再現性を求めていたんですが、田中コーチはもっと幅広くゴルフ自体の再現性を意識していました。つまりフロックで「69」が出るのではなくて、再現性の高い「69」を出すということ。以前デシャンボーがインタビューで、「リピータビリティ」という言葉を口にしていましたが、僕もいままさにそこにフォーカス当てている感じですね。
佐藤:スウィングもスコアも再現性を高めるということ?
石川:そうですね。一打一打のリピータビリティを上げて、1ラウンド合計のトータルで見たときにどれぐらいの確率でそのスコアで回れたかとかを考えています。例えばロングパットがよく入った「70」と、パターが全然入らなかった「70」では全然評価が違う。僕としては後者がいいんです。
佐藤:ショット安定型で、パターに救われていない感じですね。
石川:やっぱりロングパットというのは入る確率は低い。平均10%しか入らないパットを40%には引き上げられないので、できるところの無駄を先に削っていくほうがいいんです。
佐藤:昨年はパー5のスコアも意識してきたと聞きました。
石川:そうですね。ZOZO(10月22日~25日)のコースもパー5は全部短くて狭いんですが、池が絡んでいて難しいんですよ。事前にコーチと話をして、どのパー5も2オンを狙わない戦略にしました。ティーショットは5番ウッド(以下5W)、2打目は5番アイアンなどで打ち、3打目で勝負をかける攻め方を選択。攻めの再現性、コースマネジメントの再現性を考えると、ドライバーで行き続けるのと、5Wで攻め続けるのでは、今の自分では5Wのほうが確率がいいんです。
昨年は日本オープンでも、パー4でティーショットをドライバーで打たずに、レイアップを多用し、長い残り距離の2打目をロングアイアンで狙う攻め方もやりました。4番、5番アイアンでグリーンを狙うのがけっこう当たり前でしたね。
最終日に優勝争いをしていて、最終ホールでパーで上がったら優勝というときに、それまでドライバーでしか打ってこなかった人だったら、ティーショットをたぶんドライバーで行くしかないと思うんです。でも「5番ウッド→4番アイアンで乗せて2パットのパー」をさんざんやってきたので、そこは僕の中でも最後のよりどころになるだろうなと確信できました。
佐藤:なるほど。そうなると今は長期的な視野で見て、敢えてそういうマネジメントを自分の中に入れているということですね。遼クンの歴史って、ドライバーが怖くない頃はドライバーでガンガン攻めて、下手したら“全ドラ”というときもありましたよね。過去の日本オープンもそれで成功したし。そうなると昨年は割り切ったというか、だいぶマネジメント重視でしたよね。
石川:昨年に関しては、ティーショットを根拠のある番手で打っていましたね。元々は飛距離を伸ばしてドライバーの精度を上げようとやっていましたけれど、マネジメントの再現性を考えたときに、最終的にはこれだなと。他の選手とまったく違う番手で打とうが、自分のなかでまったく焦りがないんです。
佐藤:打つ番手は練習ラウンドで決めているんですか?
石川:そうです。昨年の試合では、最初にコースに入った日にボールを打たずに18ホールをチェックし、そのときにティーショットで打つクラブを全部決めました。練習ラウンドでボールを打たないほうが、ラフや林の状態などを、入念にチェックできる。うまくいったときは想定しなくていいというか、日本オープンの練習ラウンドは林の中からしか練習しなかったですね。結局4日間で2回ぐらいしか林に入らなかったですけど、2回だとしても試合の2打はめちゃめちゃ大事。いざ林に入ったときに「練習ラウンドであの幅に打てた」というコンタクトの感覚が試合で絶対生きると思っているんです。林に入ったときに1打も無駄にしないというのを4日間続けられれば、他の人より1打か2打は稼げていると思うんです。4日間で1打に満たない無駄を省いていきたい。今までマネジメントの“マの字”もなかったんですけど、今はマネジメント初級者編から始めています(笑)。
佐藤:コーチを付けるというのは、今までのプロ生活では初めてですよね。
石川:本当に今までいなかったですし、つけたいとも思ってなかったんです。田中コーチだから教えてほしいと言う感じなんですかね。誰が言っても揺るがないような、ある意味客観的なことを田中さんはSNSで投稿していて……。コーチの実績とかそういうので決める人いるじゃないですか、僕はそういうの一切ない。ただ田中さんが示していることに興味があったから、お願いしたいんです。
佐藤:いま遼クンがやっているシャドースウィング。あのダウンスウィングで右ひじを絞らない感じ、あれはどういう狙いなのかなと。自分も見様見真似でやってみたんですが、上手くいかないんだよなぁ(笑)。
石川:右腕、右肩の辺りの右サイドを使ってボールに力を伝えたいんです。椅子から立ち上がるときに手で机を押して立つじゃないですか。あのとき普通にわきを空けて立ち上がりますよね、ひじを張るような感じで。それがやっぱり下に力を押し込める形なんですよ。押し込める形を作ってから、インパクトで思いっきり右サイドをバーンと解放させて、飛距離を伸ばしたい。そのためにはシャフトプレーンの条件も出てくるので、今はその両方を同時に取り組んでいます。
右サイドを思いっきり使うと左に行く確率も高まると思うんですが、ここを思いっきり使っても左に行かないというか、マックス右を使っても収まるスウィングを目指しています。今は全部“つかまらないほう”にスウィングを変えていっているんで、右のミスは多かったと思います。
佐藤:右へのミスは許容していたんですね。
石川:ある程度許容せざるを得ないですね。田中コーチと話して、どちらかというと「右を許容しよう」となりました。両方を許さないとなるとゴルフができなくなっちゃいますから(笑)。スウィングを変えているときにそういうのが出るのは仕方なくて、(コースの)真ん中から右側でマネジメントをしていました。最終戦の日本シリーズ、やっていた右サイドの動きがフルスロットルで使えたときなどは、右に出て行っていた球がちょっと戻ってくる感じでしたね。
※後編は2021年1月7日18時30分公開予定
(石川遼のインタビュー全文は週刊ゴルフダイジェスト1/19号に掲載)