世界の各ツアー象徴と言えるロゴマークには、ゴルファーの姿を示すような意匠が含まれているものがほとんど。たとえば国内女子ツアーなら女性ゴルファーのフィニッシュのバストアップ。米女子ツアーもカラフルなラインを組み合わせ、フィニッシュ姿を思わせるデザインが採用されている。
前者に関しては週刊ゴルフダイジェスト2019年4月2日号の記事によれば、樋口久子元会長より「(ロゴのゴルファーのシルエットは)架空のもの」との返答が。後者もよりデザイン面を重視していて、モデルとなるゴルファーは浮かび上がってこない。
その一方で、モデルとなったゴルファーがはっきりしているロゴも存在する。国内男子ツアー(JGTO)のロゴにはフォローを取るゴルファーのシルエットが採用されているが、こちらも前出の記事によると、ロゴを制作したデザイナー・石川明氏が「JGTOが発足した1999年、ベストスウィンガーと誰もが思い、私も大好きだった中嶋常幸選手と伊澤利光選手をモデルにしてデザインしました」とコメント。
そして世界中の男子トッププロたちが集うPGAツアーの縦長のロゴに描かれた白いシルエット、フォローからフィニッシュまでクラブを振り抜いているゴルファーについても、モデルはバイロン・ネルソン説、ベン・ホーガン説、はたまたジャック・ニクラス説など多くの憶測が飛び交っている。
現行ロゴが採用された1980年当時にPGAツアーのコミッショナーを務め、ロゴ変更の決定を下したディーン・ビーマン氏の耳にもそういった噂は届いているようだが、氏はPGAツアー公式サイト内の記事でこれらの説を否定。白いシルエットのゴルファーは“誰でもない、ただのゴルファー”であると語った。
ただし、モデルではないものの参考にしたゴルファーは存在するという。実はPGAツアーロゴのデザイン制作はかの有名なウォルトディズニーカンパニーに依頼したそうなのだが、その際ディズニーサイドのアーティストたちに見せたロゴスケッチに描かれたシルエットは、ベン・ホーガンのスウィング姿を手本にしたというのだ。
「ロゴはホーガンのものではありませんが、彼はテンプレート的な存在でした」と語るビーマン氏。つまりPGAツアーロゴの白いシルエットの正体は“何者でもないゴルファー”ではあるものの、デザイン段階でホーガンの要素も多かれ少なかれ含まれていると言えるのだ。
現行のPGAツアーロゴは昨年末で採用から40周年。白いシルエットのゴルファーは、ある意味“世界でもっとも有名なゴルファー”とも言えるが、その誕生の裏には偉大なレジェンドの存在があったわけだ。