ロフトなりにボールは飛ぶ。それを“何番”とするか
鍛造マッスルバックから高初速カップフェースモデルまで、多種多様なアイアンクラブの“トレンド”をどう占ったらよいか。少し迷ってしまうが、これまでのいわゆる“進化”を考えれば、ストロングロフトモデルは今年もアイアン全体の開発トレンドになるだろうと思われる。
2020年は、5番アイアンでロフト21度というモデル(ゼクシオクロスなど)も登場。これ以上のストロング化はさすがに不要と思われるが、アスリート向けブレードアイアンのロフトを1度程度立てたり、微妙なストロングロフト化が進んでいくことは、“飛ばしたい派”が増えてきた世界ツアーを鑑みても大いにあり得るだろうと思う。
とはいえ、いくら5番アイアンのロフトが21度になろうとも、クラブセッティングのあり方は何も変わっていないのだということを、改めて書いておかなければならない。それは5番が21度になったら、もともとキャディバッグに入っていた7番ウッドやユーティリティの21度が“不要“になり、同時にアイアンの下の番手(ロフト)が新たに必要になるからである。5番アイアンのロフトが21度のアイアンセットでは、ピッチングウェッジのロフトが37度前後になっているからだ。
ゴルフゲームを距離的な“穴”を開けずに楽しもうとするならば、ロフト37度の下には、43度、48度程度のショートアイアン(ウェッジ)があったほうがよい。アイアンのストロングロフト化が進んでも、ゴルフをするために必要なロフトの組み合わせ(つまり、クラブセッティング)は何も変わらない。そういうことなのである。
よく飛ぶ5番アイアンは、打ちやすい3番アイアンである
アイアンの“進化“を正しく評価するならば、ロフト21度でもそこそこ上がりやすく、高初速で飛ばせるようになったことである。それは昭和時代の21度(つまり3番アイアン)と最新のゼクシオクロス(5番)を打ち比べればすぐに体感できる。同じロフトなのに、あきらかに最新アイアンの方が大きくて安心感があるし、軽く弾くようにボールを遠くへ飛ばすことができるのだ。
これがどちらも「3番」となっていたら、と思わずにはいられない。もし、ゼクシオクロスの5番が「3」となっていたら“なんて上がりやすくて、打ちやすい3番なんだ!すごい!俺でも打てた!”と、最新の技術に対して素直に感動できると思うのだ。
我々は便宜上、ストロングロフトアイアンと呼んでいるが、正しくは“同じロフトにしては昔よりとても上がりやすく、高初速が得られやすくなっている飛距離の出るアイアン“である。それが何番であるかは決め方ひとつ。「3」とあれば“なんてやさしいのか!”となり、「5」とあれば“なんて飛ぶんだ!”となる。同じアイアンでも違う性格のモデルのようになってしまうわけだ。
ロフトなりの距離が最新技術によって得られやすくなっているのが、現在の最新アイアンの姿だ。どこまでも遠くへ飛ばしたくなるドライバーとちがい、アイアンは狙った飛距離を打つためのクラブ。番手毎にイメージする飛距離を打ちやすいモデルはどれか? そういう視点でベストアイアンを探してみていただきたい。想定以上に飛ぶアイアンを購入しても、結局は下の番手を買い足すことになる。