「○○テクノロジー」は、目的達成のための手段
新しいゴルフクラブには新しい設計技術、新素材、新製法などが盛り込まれている。「え? この間まで○○テクノロジーを採用したから飛ぶって言っていたのに、もう違うテクノロジーに変わってるじゃん!」ということもしばしばである。PRに成功し、ゴルファーへの浸透度が高かったテクノロジーほど、それをやめちゃった時の反動も実は大きいもの。なんだ、もうやめちゃったのかと“変節”した感じに捉えられてしまうのだ。
しかし、ゴルフクラブの新テクノロジーとは目的達成のために考えられた、ひとつの“手段(手法)”に過ぎない。たとえば、インパクトでのエネルギーロスを減らす、という目的のために前モデルで用いたやり方よりも効果的な方法が見つかった。だから、新テクノロジーを搭載し、さらに高初速! とアピールするわけである。やり方が変わっただけで、目指すゴールは変わらない。ゴルフクラブを正しく理解するためには、その都度変わってしまう手段(テクノロジー)ではなく、開発目的を理解することが肝心なのだ。
このテクノロジーは何のため? テクノロジーの目的を知って“自分向き”を判断しよう
例1)
たわみを最大化する〇〇テクノロジーフェース搭載!
ドライバーのフェース材料は、より強度が高く、軽く、さらに薄く加工しても割れにくい素材、製法が常に模索されている。フェースを薄くする目的は、インパクトでフェースをたわませることで、ボールの過度の潰れを抑えてエネルギーロスを最小化すること。
現在では、フェースセンターだけでなく、その周辺にもそのたわみエリアを大きく広げるために、フェースの肉厚を細かく変化(部分肉厚/AIフェース)させ、カップフェースやリブ構造などを駆使してフェースの外周を強固に。こうすることでフェース面をよりたわみやすくするのが新テクノロジーの目的であることが多い。
例2)
〇〇カーボンクラウン搭載!超薄肉クラウンを採用!
ドライバーヘッドの天井にあたるクラウン部に、カーボン素材やボディとは違うチタンを使うドライバーも多い。この目的は天井部の“軽量化”だ。構えたときの見た目や空力、心地よい打球音のためには天井がなければならないが、ここに「重さ」がないほうが重心設計しやすいのだ。
天井を軽くしただけで相対的に床(ソール)が重たくなる。つまり低重心設計にしやすくなる。その上、軽くなった分の「重さ」をヘッドのどこかに再配分することができる。ソールに配分すればさらに低重心に。ヘッド後部に持っていけば深重心に。ヒールサイドに持っていけば重心角が大きくなってつかまりがよくなる。モデルによっては動かせるウェートとしてデザインし、セルフチューニング機能として使うこともある。
ちなみに、低重心は低スピン化に寄与。深重心はインパクトロフトが大きくなりやすく、打ち出し角のアップに寄与。大きな重心角はダウンスウィングで大きく開いたフェースをスクェアに戻しやすくする効果がある。
ゴルフクラブに使われる最新テクノロジーは、そのほとんどが軽量化のためにあるといっていい。フェース、クラウン、ボディの一部を“軽量化”するのは、自由に再配分できる「重さ」をかき集めるためなのだ。見極めたいのは浮いた重さの使い道。それによってクラブの性格が決まり、自分向きかどうかが推量できるようになる。テクノロジーよりもヘッドのどこが重たいか? という視点で続々登場するニュードライバーを眺めていただきたい。