つかまえにくいからこそ注目される、“つかまりがいい!”という進化ワード
最新ドライバーの紹介文を読むと、必ずといっていいほど出てくるゴルフクラブ専門用語がある。
「つかまりがいい!」
このドライバーはつかまりがいい、などというのは、「ダウンスウィングからインパクトにかけてのヘッドのターンが強い」という意味。フェースを右に向けたままインパクトしやすいゴルファーでも、ヘッドのターンが強いのでスクエアにインパクトできる可能性が高いですよ、という意味だ。
ではなぜ、これほどまでに“つかまりがいい!”が進化ポイントのように言われるのか?
ひとつにはアマチュアの中には、依然として「自分のスウィングでヘッドをターンさせることができていない人」が相当数いるから。スライスに悩む人が多いので、クラブ側でヘッドターンを補助し、スクエアインパクトに近づけようという試みをゴルフクラブメーカーはもう半世紀以上も続けているわけだ。
補足になるが、自分のスウィングでヘッドターンができる人(俗にいう上手い人)が「つかまりがいい!」モデルを選んでしまうと、当然思ったよりもボールは左に飛んでしまう。「つかまりがいい!にも程がある、ということである。
もうひとつ、近年とくに「つかまりがいい!」という進化ワードが目立っている背景には、ヘッドの大型化(高慣性モーメント化)がある。
ミスヒット時のヘッドのブレを抑えて平均的に飛ばしていこう!という目的で全メーカーが取り組んでいるヘッドの高慣性モーメント化は、主にヘッドの中心を空洞化しヘッドの外周に重さを分散配置することで達成される。このため、重心距離が長めになってしまうのは避けられない。単に重心距離が長くなってしまうと「上手い人」でもダウンスウィングからインパクトでフェースをスクエアに戻すことが難しくなってくる。それを調整するために、ヒールウェイトにしたり、フェースの位置(F.P.)や重心角を調整してなるべくスクエアインパクトしやすいようにしている、というわけだ。ちなみに「世界で最も上手い人たち」はスウィングを「最新」にして、自分でつかまりの強くないクラブをコントロールしている。
これも補足だが、ヘッドの高慣性モーメント化に伴って発展したのが、ゴルファーが自分自身で調整できる“動かせるウェイト機構”や“フェースの向きを変えられるシャフトスリーブ”などのチューニング機能。最新ドライバーのほとんどに2〜3のヘッドタイプがあるのも、人によって必要な“つかまり度”に差があるからである。昔はヘッドの大きさでつかまり度を変えていたが、今は高慣性モーメント化が基本なので、すべて大型ヘッドになっている。その中であらゆる人にスクエアインパクトを提供するために、細かいヘッド形状の調整、ウェイト配置、調節機能を開発して、最適な“つかまり度”を提供しようとしているわけである。
まとめると、「つかまりがいい!」が持てはやされる背景には、ゴルファー側のスキル、あるいはクラブの開発トレンドによって、そのままでは「つかまりが悪くなってしまう」可能性が高まっている、ことがある。
今の時代、「つかまりがいい!」というのは、決してドローボールが打てる! という意味ではない。どちらかと言えばプッシュアウトしにくい(=ドローはイメージしにくい)ヘッド! と解釈すべきだろう。最新高慣性モーメントドライバーは同じシリーズでだいたい3つのヘッドがある。ぜひ、いろいろ試打をして狙った方向に打ち出せる自分に適した「つかまり度」のモデルを選んでいただきたいと思う。狙った方向に打ち出すことができなければ、直進性、飛距離につながる高慣性モーメントやフェースの広域反発性能は活かされないのだから