メモをとりながらプレーすることで成功/失敗の原因をあぶり出す
あるオフの一日、青木瀬令奈とコーチ兼キャディを務める大西翔太はいつものように練習ラウンドを行っていた。
2020年のベストフィニッシュは「日本女子プロゴルフ選手権」の9位タイ。予選落ちも6回あって賞金ランクも52位と不本意なシーズンを過ごした青木。ツアーの世代交代の波は激しく、2021年シーズンに並々ならぬ危機感をもって臨んでいる。
その練習の趣旨は、苦手克服よりは得意分野を伸ばすことだと青木はいう。
「今までは足りないところ、飛距離を伸ばそうとしてきましたが、グリーン周りだったり、得意な所をもう少し詰めて“もったいない”をなくすことに重きを置こうとシフトチェンジしています」(青木瀬令奈)
昨年、飛距離を求めた結果、得意分野であるはずのグリーン周りのショットでパーやバーディを取りこぼしスコアを崩していたことが多かったと青木。そこでアプローチでは落とし場所へのキャリーのコントロールや転がしのアプローチの練習などを増やしつつ、ショットの精度向上をオフの課題に掲げている。
そのために大事なことはスコアカードに「メモ」をすることだと青木は言う。どういうことだろうか。
「昨日のラウンドで感じたことをテーマにして、スコアカードの一番上に書いてスタートします。そこからショットについて感じたこと、指摘されたことをメモしながらラウンドしています」(青木)
オフのラウンドでも試合と同じようにセカンドの距離や使った番手をメモし、普段から試合と同じように気を抜かずにラウンドしている、とは同行したコーチ・大西の弁。そうすることで課題が見えてくるという。
「フィニッシュが上手くとれなかったり、上半身と下半身のバランスが崩れたりしたホールを振り返ると、狙いよりも右を向いてしまっていたりと打ちたい弾道と構えが合っていないことが多いんです。メモしておくと自分にとって構えやすかったり、構えにくかったりするロケーションが見えてきて、あらかじめミスを消すことができます」(大西)
ほかにもピン位置や風、番手間の距離を打ち分けたり、球筋を曲げたり、高さをコントロールした際の体の動かし方のイメージや構え方など、それらが成功したかミスしかをメモしていく。その中で、どうして成功したのか、どうして失敗したのかという分析が積み重なっていくというのだ。
青木の場合は、その一つ一つを次のショットに入るルーティンの中で口ずさみながら構えて打つという。このようにメモしながらラウンドすることが、シーズンに向けて調子を上げていくことにつながっている。
新しい世代がどんどんツアーに参戦してくることで予選カットラインも上がり、シード圏を争う戦いは激化、ハイレベル化の一途。ツアーの最前線で戦うプロのオフの練習ラウンドは、一打も気を抜かない「試合モード」だった!
取材協力/ニッソーカントリークラブ