キャロウェイとテーラーメイドの2021年の新製品が発表され、ゴルフクラブ市場もいよいよ賑やかになってきた。一番の注目はドライバーだが、それ以外にも見逃せないアイテムが多い。中でも筆者がもっとも気になるのは、オデッセイのパター、「2ボール テン」だ。
その名の通り、大ヒットモデルである「2ボール」と「スパイダー」型である「テン」の二大パターを集約したモデルで、いいとこ取りというか、その姿はもはや悪魔合体とさえ呼べるだろう。
一応、おさらいしておくと、オデッセイの「2ボール」は2001年に登場した形状だ。その当時、パターはL字型やブレードタイプ、アンサー型などが中心だった。マレット型は小ぶりなものが大半で、別名カマボコ型と呼ばれていた。90年代後半に。ボビーグレースの「ファットレディ」などが活躍し、いわばネオマレット前夜という時代だった。
そんな時代に、見たこともない形状で「2ボール」は現れた。最近、ゴルフをはじめた人に、そのときの衝撃を説明するのは難しい。はるか未来から全く新しいものがやってきたような、その異彩を放つ形状に誰もが驚いた。
当初は、多くのゴルファーがその形状に拒否反応を感じたが、意外にもそれを受け入れたのはトッププロたちだった。アニカ・ソレンスタムや宮里藍といった当時のスターが使用したことで、「2ボール」は空前のヒット作となっていく。1組4人が4人とも「2ボール」ということも少なくなかった。それはまさに革命で、パターのパラダイムチェンジが起きたとさえ言える出来事だった。
(※もっとも筆者は、『2ボール』を初めて見たとき『ペルツパター』のようだとも思った。ゴルフ界では斬新なアイディアでも既に過去に類似のクラブが作られているケースが多い)。
もう一方の雄、テーラーメイドの「スパイダー」が登場したのは2008年だ。小さなマレット型がカマボコ型なら、「スパイダー」は巨大な箱型だった。“弁当箱”と揶揄されるほど大きく四角い形状で、素材の違いを活かして周辺に重量を配分していて、非常に直進性が高く、ミスヒットに強かった。
しかし、あまりにも大きすぎると言うことで、少し小ぶりなモデル「イッツィー ビッツィー」も追加で登場した。おそらくマザーグースをその名の由来に持つこのパターはプロ、アマ問わず好評で、人気となっている現行モデルの「スパイダー」はこの頃の「イッツィービッツィー」のサイズだ。
「スパイダー」の人気を決定づけたのは、ジェイソン・デイだろう。それまでPGAツアープロの大半がブレード型やアンサー型を使用していたが、デイが「スパイダー」で活躍したこともあって、ツアーでの使用者が増え、セルヒオ・ガルシアのマスターズ制覇やマキロイやダスティン・ジョンソンの活躍へとつながる。
「スパイダー」のツアーでの高い人気もあってか、2019年にはオデッセイから「スパイダー」に非常に似た形状の「テン」が発売された。これは「スパイダー」が単にテーラーメイドの1モデルではなく、パター形状のスタンダードとして認められた瞬間だったと言えるだろう。
オデッセイはアマチュアからの人気だけでなく、ツアー使用率NO.1にこだわってきたメーカーだ。「スパイダー」型を望む選手がいるなら、こっちでも用意しようじゃないかという、なんともいえない執念を感じる。
そして、いよいよ3月に発売されるのがその2つを集約した「2ボール テン」だ。「スパイダー」型のヘッド形状に、「2ボール」のアライメントを搭載したというこのパター、プロレスに例えるなら、馬場と猪木が手を組んで、新団体を立ち上げるようなもの。トレンディドラマなら、W浅野が共演する「抱きしめたい」のようなパターだ。これは気にならないと言えば、ウソになるだろう。
シャフトはオデッセイで人気のカーボンとスチールの複合シャフト「ストロークラボ」が装着。キャロウェイ独自のアライメント「トリプルトラック」が入ったモデルもあり、まさに全部盛りだ。価格はやや高めの3万8千円税抜。
現物を見て、購入を検討したいところだが、筆者はおそらく指名買いで買ってしまいそうだ。時代のある種の到達点を感じさせるモデルと言えるだろう。