急ハンドルではどうにもならない!? 最新ドライバーの猪突猛進性能
テーラーメイド「SIM2」、キャロウェイ「エピック」、タイトリスト 「TSi」、ピン「G425」と、ミスヒットに寛容な高慣性モーメントドライバーが米国メーカー各社から出そろう2021年の春。インパクトで少々芯を外してもロスなく高初速&適正バックスピンでボールを打ち出してくれるドライバーの進化はとてもありがたいことだが、それを使う側(ゴルファー)が頭の片隅でイメージしておいた方がいいことがある。それは、「高慣性モーメントドライバーは“小手先”で帳尻合わせがしにくい」ということである。
一度動き出した方向に対して動き続けようとするチカラを慣性というが、このチカラが強いということは、スウィング中に小さい動き(リストターンなど)でフェース向きを変えようとしても難しいということ。オートマチックに動くといえば聞こえがいいが、それは急なハンドル操作では進路変更できないという意味なのだ。
つまり、高慣性モーメントドライバーの“猪突猛進”性能を活かすためには、正しい軌道にクラブヘッドを乗せてあげることが最も大切となるわけである。そして、それが最も難しいのがゴルフであることは周知の事実であろう。
ヘッドの重さを感じましょう!は、ヘッドの重心をつかまえよう!という意味
ゴルフレッスンなどで昔から「クラブヘッドの重さを感じてスウィングしましょう」という教えがあるが、実はドライバーの長尺化、ヘッドの高慣性モーメント化が進んだ現代ゴルフでは、よりこの意識が必要になってくると思われる。
それは、ヘッドが大型化すれば重心距離が長く、そして深くなっていくためにシャフトの軸線からヘッドの重心点がどんどん離れていってしまうからだ。クラブヘッドの後方に重さがあるとテークバックで“無造作”に数センチヘッドを動かしただけで、フェースが開いてしまいやすい。この始動直後のフェースの開きを最後(インパクト)まで補正できないことが、高慣性モーメントドライバー最大の“弱点”(難しさ)ということができるのだ。
近年、「クラブフェースをシャット(閉じ気味)に上げる」という表現がレッスンで使われているのも、現代ドライバーがフェースを開いて上げやすく、動きの中で軌道修正することが難しいからであろう。
460ccの大型ヘッドは“前重心設計”と書いてあっても、重心深度が40ミリ弱ある。中には50ミリに迫る深重心ヘッドも存在している。その一方で多くのゴルファーはボールにしっかり当てたいあまりに、ボールやフェースに気持ちを集中させてしまいがちだ。ゴルファーの「視点」とヘッドの「重心点」との間にある4〜5
センチのギャップ。ここにやさしいはずの最新ドライバーでいい球を打てない原因が潜んでいるのである。ここに注意を払っていないと、よーい・ドン!でフェースを開きながらクラブを上げてしまうことになり、スウィングの序盤数センチでプッシュアウトやスライスが決定してしまうのである。
レッスンでよく言われる「クラブヘッドの重さを感じてスウィングしましょう」は、フェースより4センチ程度後ろにある重心(バランスポイント)を感じながらヘッドを動かさないと、正しい軌道に乗せていけませんよということ。ヘッドの重さ(重心)を感じるというのはなかなか難しいことだが、アドレスでヘッドの中心付近に意識を持っていくことは可能だろう。
フェースやボールではなく、ヘッドの後方にある「重さ」を感じ、それを自分の身幅から外さないように振っていく。ヘッド重心をつかまえて動かすことが進化した高慣性モーメントドライバーの寛容性を正しく活かすポイントになると、個人的には思う。