「人によって体格の違いがありますし、スウィングは十人十色。しかし、骨の数に位置、関節の動く方向など、体の仕組みから考えたら、正しいスウィングはひとつだけ。それさえ理解できたらスウィングは驚くほど簡単になるはずです」と話すのはプロゴルファー・大谷奈千代。
「ゴルフスウィングでは回旋、いわゆる『回す』という言葉をよく聞きますよね。では、この回すというのは具体的にどこの部分を回すことだと思いますか?『腰を回せ』『腰を切れ』というレッスンもありますから腰をイメージするゴルファーも多いかもしれませんが、腰椎(ようつい)は2〜5度までしか回りません。ではどこが回るのかというとズバリ、35度まで回旋する胸椎(きょうつい)です。胸椎が回旋することで腰椎が引っ張られて動いているだけ。これが人体の構造から考えるスウィングの『基本』です」(大谷、以下同)
このように、人体の構造的になにが正しいかを知った上でスウィング作りを行っていこうというのが大谷の考え方。そして、その土台となるのはいうまでもなくアドレスだ。
大谷は、「胸椎を正しく回すための大前提として、アドレスで正しく股関節を屈曲できていることが大事」だという。
「股関節は、直立した状態だとロックがかかった状態で、その状態では胸椎を回そうとしてもうまくいきません。まずはシャフトを股関節にあて、屈曲(前に折り曲げる)すること。そのことでロックが解け、胸椎を回す準備が整います」
もうひとつ胸椎を動かすために大事なポイントは「肩甲骨のポジション」だ。
「アマチュアの方に多いのが、腰が反って肩甲骨が背骨に寄りすぎるパターンと、その逆に肩甲骨が開いて猫背になって、わきが空いてしまうパターン。どちらも、動かしたい関節をロックしてしまうため、まずは正しい肩甲骨の位置を覚えることが大切です。具体的には、表彰式の受け取りの形とよく似ていて、両肩に指先を当てた姿勢から手のひらを上に向け、両手を体の正面に運ぶ。これだけで、わきがしまり、正しい肩甲骨のポジションをとれるようになります」
アドレスはスウィングの土台となる部分。まずはしっかりと体(=胸椎)を回す準備をしておくことが、ナイスショットを放つためには必要なのだ。
(つづく)
取材協力/ヒルズゴルフアカデミー