ギアライターの高梨祥明がゴルフクラブ選びの基礎知識を短期集中で解説。第2回目はヘッドのロフト角について。 昔はハードヒッターほど立ったロフトのモデルを選ぶのが当たり前だったけれど、今どきは“逆転現象”も起きているようだ。

男子の400ヤードヒッターが10.5度で女子のトップランカーガ8.5度を使う不思議

ゴルフ業界はとかく“ヘッドスピード”でゴルファーを大別したがる傾向が強い。ヘッドスピードが速ければ“硬いシャフト”、“少なめのロフト”。遅ければ軟らかく、ロフト大きめにしよう! というのが定説だ。

では、本当にそうなっているのだろうか?

ヘッドスピードが速く、時にはドライバーで400ヤード近くも飛ばすダスティン・ジョンソンは、テーラーメイドSIMドライバーのロフト10.5度を選択し、2020年のマスターズチャンピオンになった。シャフトスリーブ調節機能を使って実質10度くらいに調整しているらしいが、屈指のパワーヒッターにして2桁ロフトというのは、なんとなくイメージが違うのではないだろうか?

画像: ドライバーのロフト選びは入射角とインパクトロフトを参考に決めるべき(写真/姉崎正)

ドライバーのロフト選びは入射角とインパクトロフトを参考に決めるべき(写真/姉崎正)

ちなみに先日PGAツアーで久々に優勝したメジャーチャンピオンのブルックス・ケプカもテーラーメイド「M5」ドライバーの10.5度を久しく愛用。彼の場合は3Wも「M2 TOUR HL」(16.5度)と大きめロフトを選んでいるのが特徴的だ。アマチュア男性の中には9.5度のドライバーに、15度の3Wという人が多いかもしれないが、筋骨隆々、ツアー屈指のロングヒッターたちが自分より大きいロフトをチョイスしている現実を知ると、なんとなく自分のロフト選択に疑問符がついてくるはずである。

しかし、ご安心あれ。2020シーズンのLPGAツアー ソルハイムカップポイントNo.1に輝いたダニエル・カンは、テーラーメイド「M4」の8.5度を使っていた。また、今シーズン開幕戦を制したジェシカ・コルダは、キャロウェイ「マーベリック サブゼロLS」の10.5度ヘッドをスリーブ可変で9.5度にして使用しているという。一桁ロフトで最高の結果を出している女子プレーヤーも多いのだから、我々一般男性が9.5度ヘッドを使っても特におかしくはないはずである。

気にとめておくべきなのは、ヘッドスピードが速いから「立ったロフト」、遅めだから「寝たロフト」という定説は、今の時代存在しないということだ。

ロフト選びの目的は!? 何度が最適!? 最初に知るべきは自分のインパクトロフト

男子のパワーヒッターと女子のトップ選手でドライバーロフトの数字が「逆」のイメージになってくるのは、すなわちインパクトでのロフト状況が「逆」になっている、と推察することができる。400ヤード飛ばす男子パワーヒッターはいわゆるハンドファーストでインパクトするため、ロフトを立ててながらボールを捉えていく。

一方、女子選手の場合はインサイド・アッパー軌道で振っているケースが多く、この場合インパクトでロフトが大きくなりやすい。このためドライバーのロフト設定が小さくなると考えられるのだ。

シンプルにいえば、アドレス時よりもロフト立ててインパクトするか(男子)、ロフトを増やしてインパクトするか(女子)の違いによって、そもそものドライバーのロフト選びが僕らのイメージとは「逆」になってくるのである。

確かに高重心ドライバーしかなかったメタルヘッドドライバーの時代は、パワーヒッターほど6.5度や7.5度といったローロフトモデルを選択し、超ハイティーアップにして強烈なアッパー軌道でインパクトしていた。こうすることでフェース上部のわずかな有効打点エリア(スピンの増えないエリア)でヒットし、高打ち出し&ロースピンでボールを遠くに飛ばすことができたのだ。

また、ロフトが立つほどにフェース面上の重心は下がり、有効打点エリアが広くなってくる。これが「パワーヒッターは低ロフト」という定説を生み出した原点でもある。

ロフトを立てればスピンは減るが、打ち出し角度が低くなってしまう。だから、そのぶんアッパー軌道を強くしてインパクトロフトを増やしてバランスをとった。これが昔の高打ち出し&ロースピンのメカニズムだったのだ。

しかし、ヘッドの低重心化とボールのロースピン化が進んだ今では、特にアッパーに打たなくても適正スピンで打っていくことが可能。ハードヒッターが吹き上がりを気にせずドライバーを打つことができるロースピン時代だからこそ、ヘッドスピードで適正ロフトが決めつけることができない。そういうわけである。

どうすれば自分の「適正ロフト」を見つけることができるのか?

自分なりの適正ロフトを知るためには、ゴルフショップなどにある弾道測定器などを利用して、自分のインパクト軌道/入射角(あるいはインパクトロフト)を把握する必要がある。これらの数値が計測できない場合は、複数のロフトモデルを試し、打ち出し角度とバックスピンのバランスをチェックしてみたい。

ヘッドスピードが40m/s〜43m/sくらいの場合、基本的にはバックスピン量が2600回転/分前後、打ち出し角度が12度以上あれば比較的安定した弾道が確保できると考えられる。とくに3000回転/分以上バックスピンがある場合は、低ロフトも視野に入れた方がいい場合も出てくる。

もちろん、ロフト角を小さくすればスピンが減って最大飛距離に近づいていけるのだが、それにともなって打ち出しが低くなるのが二律背反の難問。こうなれば、やはりスウィングのアッパー角を強くして、打ち出しを確保するしかない。つまり、冒頭の女子選手のような振り方の工夫が必要になってくるのである。

ロースピン化を目指して開発された現代のボールとドライバーの組み合わせでは、ヘッドスピードの速いパワーヒッターのほうが2500回転/分以下のロースピンで打ち、ヘッドスピードの速くない一般アマは3000回転/分以上のハイスピンで打っているケースが多い。低スピンで打てる者は400ヤード以上! と激しく飛距離を伸ばし、スピンを減らせない我々の飛距離はさほど変わっていない。それも現実なのだ。

低めのロフトを選択し、アッパー角を強めてインパクトロフトを増やしていくのならば、自分でアッパーに振ろうなどとは思わず、なるべくヘッドの後部が重たい「深重心」モデルを選ぶのがポイントになる。PGA選手が使っている「前重心」モデルで低ロフトヘッドを選んでも単純に上がらなくなるだけである。ウェートがソール後部についていて自然にインパクトでフェースが上を向きたがるようなドライバーを試してみることをオススメしたい。

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