まずテーラーメイドのSIM2シリーズは「SIM2マックス」、「SIM2マックスOS」アイアンの2機種をラインナップ。エピックシリーズに関してはドライバー、フェアウェイウッドのみのラインナップとなっているが、その穴を埋めるように、キャロウェイの人気アイアンシリーズAPEXのニューモデル、「APEX」、「APEX DCB」、「APEXプロ」アイアン3モデルの発売が2月26日に控えている。
とはいえ「両シリーズのアイアンの性能はまったく違う方向性になっていると言っていいでしょう」というのは、プロゴルファー・中村修。
「SIM2のアイアンは2モデルとも主にアマチュアをターゲットとした飛び系モデル。対してAPEXは、テーラーメイドでいう『Pシリーズ』に相当する、プロの使用が想定されるモデルも含まれるシリーズになっていますね」(中村)
それはロフト角の設定からも読み取れる。SIM2マックスが7番で28.5度、SIM2マックスOSがさらに立たせた25.5度とストロングロフトになっているのに対し、スタンダードモデルのAPEXは30.5度、APEXプロが33度、寛容性を持つAPEX DCBでも30度とロフトが立ちすぎていない設定だ。
ではこの全5モデル、それぞれどのような性能となっているのか。中村と、同じくプロゴルファーの堀口宜篤の2名に試打して確かめてもらおう。試打スペックはすべて7番、それぞれ純正シャフトのSフレックスを装着し、両者ともドライバーのヘッドスピード46m/s程度の振り感で試打を行ってもらった。
UT並みに飛ばす“ぶっ飛び系”! 「SIM2マックス」
まずはSIM2マックスから。薄型フェースを採用したりホーゼル部を肉抜きするなど、ヘッド全体から余剰重量を捻出し、低重心設計を実現。ロフトは7番で28.5度とストロング設計の飛び系アイアンに仕上がっている。構えた印象はどうだろうか。
「トップブレードに厚みがあってバックフェースも見えるので、構えたときに安心感がありますね。そして7番ですがロフトは28.5度。やはり見た目もオーソドックスなものより1.5~2番手くらいはロフトが立っているような印象です」(堀口)
計測データではトータル飛距離約185ヤードをマーク。飛び系アイアンらしい、7番とは思えない飛距離だが、スピン量は安定して約4500回転ほど出ており、打ち出し角も約17度と高弾道。
「ユーティリティ程度のスピン量で、ユーティリティより少し球が上がる、という感じですね」という堀口に、「アイアンセット5番を抜いてSIM2マックスの7番を入れると、やさしく打てつつ飛距離も出て良さそうです」と中村も同意する。
さらにやさしくぶっ飛ばす「SIM2マックスOS」
続くSIM2マックスOSは、SIM2マックスをベースにソールを厚くし低重心化を図ってやさしさもアップ。フェースもさらにワイドになっている。シリーズ2モデルのうち、SIM2マックスがスタンダードモデルだとすれば、SIM2マックスOSはより飛距離性能と寛容性に特化させたモデルとなっていると言えるだろう。
見た目に関してはSIM2マックスが元になっていることもあり、サイズ感以外は大きく変わらないものの「ややグースネックになっている感じですね」と中村が言う通り、異なる点も。
ロフトがさらに立った25.5度(7番)ということもあって、トータル飛距離は200ヤードの大台を超える約205ヤードをマーク。打ち出し角も約15度依然高弾道で、スピン量も約4300回転ほど入っていた。
「本当にやさしく飛ばせますね。ジャンルとしてはぶっ飛び系なんですが、そんな見た目とは思わないですし、球が打ち出ていく感触はあるんですが、打感はやわらかめ。棒球でもなくしっかり飛んでくれます」(中村)
タングステンウェート内蔵でやさしく飛ばす「APEX」
対するAPEXシリーズ、まずは「APEX」から見ていこう。フォージドモデルで、見た目はオーソドックスなキャビティバックだが、ヘッド内側下部に比重の重いタングステンウェートを配し低重心化を図っているのが最大の特徴。
3モデルのなかではスタンダードモデルという位置づけとなっているが、見た目については「ブレードも薄めだしネック形状もグースっぽくない、個人的に構えやすい顔ですね」と堀口。
試打結果ではトータル飛距離の平均は約180ヤード。打ち出し角は約17度ほどで、スピン量は約4900回転としっかり止まってくれそうな数値に。
「打感も柔らかめだし、低重心化のおかげで高い球も打ちやすい。ロフトは7番で30.5度とやや飛び系かなくらいですが、スピン量と打ち出し角のバランスも良いし、やさしさも感じます」(堀口)
100切りを目指すゴルファーにオススメ!「APEX DCB」
続いてはAPEX DCB。モデル名のDCBは「ディープキャビティバック(Deep Cavity Back)」の略で、スタンダードモデルのAPEXをベースにしつつ、キャビティが深く広くなって寛容性がアップしたモデルだ。
スタンダードモデルから形状を少し変化させてより寛容性を高めるという設計は、前述したSIM2マックスOSと非常に似通った特徴。DCBでも、SIM2マックスOSと同様に元モデルと比べてオフセットが大きめのグースネックになっており、ソール幅は広くトップラインは厚く、とヘッドのサイズ感を変えることでやさしさを生み出している。
元モデルよりロフトが立っているのも共通項だが、SIM2マックスOSが元モデルから3度も立たせた25.5度の超ストロング設計であるのに対し、APEX DCBのロフトは7番で30度。APEXからわずか0.5度立たせた程度で劇的な変化とはなっていないのが面白いところ。
飛距離と寛容性のどちらも重視するSIM2マックスOSと、あくまで“APEXをもっとやさしく”を目指すAPEX DCB、という違いがロフト設定に表れていると言えるだろう。
見た目の印象は「構えてみると、たしかにブレードはやや太め。グースが入っているのでやさしく見えますね」と堀口。ロフトがAPEXの3モデルの中で30度ともっとも立っていることもあり、トータル飛距離は約185ヤードとやはりもっとも飛ぶ結果に。スピン量は約4800回転、打ち出し角は約16.5度という結果になった。
「APEX DCBに関してはSIM2寄りのやさしく飛ばせる性能といった印象ですね」(中村)
上級者向けのルックス。だけどやさしい「APEXプロ」
続いて打ったのはAPEXプロ。3モデルのなかではシャープな形状でどちらかと言えば上級者向けのモデルなのだが、中空構造を採用。APEXと同様にタングステンウェートを搭載することでやさしさも兼ね備えたモデル。ロフトも7番で33度と寝た設定で、中村も「見た目はマッスルバックみたいなカッコいい形状に仕上がっていますね」と評価する。
試打結果はトータル飛距離約175ヤード。打ち出し角は約18度、スピン量は約5000回転と、微差ながらAPEXよりもややスピンがかかるという結果が出た。
「シャープで球の打ち分けしやすいイメージが伝わってくるような、一見難しそうなブレードタイプのルックスですが、やはりタングステンウェートが入っているぶん打っていてやさしさを感じます」と堀口。
中村は「低重心ではあるけどタテ方向のミスにも強くなっている」と指摘。「アイアンといえばダウンブローに打ち込んでいくイメージですが、APEXプロは力まずサラッと打てるのが良いですね」という。
SIM2とAPEXの全5モデルの試打を終えたプロたちがまず感じたのは、「それぞれやさしく打てる寛容性とスピン性能、飛距離性能を備えつつも、モデルごとに色分けがしっかりされている点」だ。
「まずSIM2シリーズの2モデルは、5モデルの中でもとにかくやさしく飛ばしたいゴルファーにオススメ。APEX DCBに関しては、SIM2シリーズほどストロングロフトに振り切ってはいないですが、やさしく打てるやや飛び系で、100切りを目指すレベルのゴルファーにピタリとはまりそうです。APEXはロフト的にはDCBと0.5度しか変わらないですが、見た目のシャープさがあるので、また対象ゴルファーが一段変わってくる印象。APEXプロはアスリートライクなシャープさを持ちつつやさしさもあるので、マッスルバックを使ってみたいけど難しそうだなと敬遠しているゴルファーにはオススメですね」(中村)
しっかりと対象ゴルファーが分かれている形となったキャロウェイとテーラーメイドの最新アイアン。今の自分にはどのモデルがしっくりくるのか、プロ2人の意見を参考に試打して確かめてみてほしい。