4月9日に発売されるピンの新しいラインナップ「2021パター」シリーズの発表会があった。以前から採用されているインサート素材「ペバックス」を硬軟2層の構造とし、ショートパットではソフトな打感で繊細な感触を出し、ロングパットではしっかりした打感で距離感が合いやすいというコンセプトで作られている。
フェースのトウとヒール部分には、高比重ウェートをインサートしている。これは以前から特注対応で行われた仕様で、プロが実使用するパターなどに多く使われる、いわば憧れのウェート位置。このウェートが標準採用されたことで、機能もさることながら、見た目でもグッと特別感が増している。
中でも目を引くのが、今回初ラインナップとなった形状「ハーウッド」だ。重心から最も離れた場所に重量を集中させた重量周辺配分設計で、シリーズ最大の慣性モーメントを実現している。その数値は、上下左右で1万g・cm²を超えるという。
よく知られている通り、慣性モーメントとは、ヘッドの回りにくさのことで、ミスヒットの強さの指標になる。ヘッド左右の慣性モーメントは上限が5900g・cm²とルールで決まっている。ピンは左右に加えて上下の慣性モーメントと足して表記しているのだが、ヘッド形状から推測する限り、おそらくヘッド左右慣性モーメントは5900g・cm²を超えているだろう。
ここで筆者も盲点だったのだが、ルール上限となるヘッド左右の慣性モーメント5900g・cm²とは、ウッドにのみ採用され、パターには適用されない。たしかに、ドライバーに比べて、ヘッド重量が非常に重くなるパターの領域では、このルール上限が厳しすぎるおそれもあるだろう。一般的なドライバーのヘッド重量が200グラム弱くらいだとしたら、大多数のバターは350グラム以上あり、この「ハーウッド」に至っては、385グラムもの重量がある。ヘッド重量が重いほど、慣性モーメントは大きくなる傾向がある。
ピンは周辺重量配分でミスヒットに強くする、そのやさしさが売りのメーカーだ。ドライバーやアイアンだけでなく、1966年に発売された「アンサー」が、トウヒールバランスで、当時としては画期的なやさしさを持ったように、そのコンセプトは長年追求されている。
高慣性モーメントということでいえば、半円型の巨大ヘッドを持つ「Doc17」をはじめ、「Craz-E(クレイジー)」や「ウルヴァリン」など、よりやさしさを求めて独自の形状を次々に生み出してきた。昨年の「へプラー」シリーズの新形状「トムキャット14」は記憶に新しい。今回の「ハーウッド」もその系譜に位置する高慣性モーメントモデルだ。
筆者も早速打ってみたが、まず構えたときの大きさ、そして後方部の長さに目を奪われる。最後部には左右にタングステンウェイトが設置してあり、ストロークしてみるとその重さを感じる。ミスヒットには非常に強く、意図的にトウやヒールの端っこで打ってみたが、どう打ってもフェースの向いた方向に転がっていく。これは、ショートパットでは有利に働くだろう。
とても安心感があり、悪く言えば鈍重さのあるパターで、長尺パターを扱っているような重量感のあるフィーリングだ。クロウグリップなどで、出来るだけオートマチックにパッティングしたい人にはかなり面白いプロダクトだろう。
操作感があまりなく、距離感が出しにくいのではと心配する人もいそうだが、そこは心配無用。他にも10形状がラインナップされていて、好みの操作感で形状を選ぶことができる。
価格は「ハーウッド」は5万2800円税込。他の形状は、3万7400円税込だ(※ともに長さ調整機能なしの価格)。