「ダイキンオーキッドレディス」は小祝さくら選手の逆転優勝で幕を閉じましたが、個人的に注目したいのが、惜しくも3位フィニッシュとなった田辺ひかり選手です。
今シーズンはQTランキング46位でツアーに参戦。開幕戦は推薦枠で出場していました。師事する佐伯三貴プロのもとで実力を身につけていき、昨年の「日本女子プロゴルフ選手権」では2位タイフィニッシュと躍進。今大会ではドライバーショットが非常に安定していました。
ダイキンで田辺選手に帯同した高橋淳也キャディによれば「プレースタイルはショットメーカーで、狭いホールも刻むよりドライバーで打つタイプ」とのことで、飛距離は240ヤードほど。
フェアウェイキープ率は約76.8%。昨今の事情もありドライビングディスタンスは公式計測されていませんが、平均240ヤード以上は飛んでいるように見えました。
では飛距離を出しつつ安定感もある田辺選手のドライバースウィングを見てみましょう。まず特徴的なのは、グリップを短く握っている点。写真A左が分かりやすいですが、拳1個ぶんほど余らせています。短く握ることでミートしやすくなるのはもちろん、クラブを操る手の感覚を感じやすくなるというのも大きいのではないかなと思います。
田辺選手は寝る前にはグリップを拭くことがルーティンになっていて、グリップ交換も少なくとも2か月に1度は行うといいます。少しでも気になったらすぐに変え、差し方まで気にするこだわりぶりです。
道具の細かな変化も感じ取れる、指先や手の感覚が非常に敏感な選手ということですね。ドライバーだけでなくアイアンでも短く握っていて、アプローチなどショートゲームにも活かされていそうですね。
さて、スウィングに話を戻しましょう。テークバックでは体の遠くへクラブをワイドに上げていき、早い段階で体を捻り始めます。捻転差は非常に大きく、左腕と地面が平行になった辺りですでに十分な捻転が作られていますね(画像A右)。そのことで上半身がトップの形を迎える前に下半身から切り返し、スウィングのパワーを生む捻転差を作ることができています。
そしてトップからの切り返しを見ていきましょう(画像B)。画像B右を見るだけでも下半身の強さが伝わってきますよね。しっかりした下半身の土台があることで、捻転差によって生まれた力を回転力に転換し出力を上げることができています。それでいて上半身は流れず残っているから、体も開かずインサイドからクラブが下ろせています。
そしてインパクト(画像C右)では左足のひざを伸ばすように踏み込むことで、体の回転をさらに加速。しっかりとボールに力を加えつつ軸もブレない、素晴らしいインパクトができています。
安定して飛ばせるドライバースウィングも手伝い3位フィニッシュできたことで、開幕戦前の段階では出場できるか不透明だった2021年2戦目「明治安田生命レディス」の出場切符も無事獲得。少ないチャンスをつなげ出場機会をモノにする、デビュー当時の原英莉花選手や稲見萌寧選手のような力強さを感じさせる選手ですね。先週に引き続き、今週末の活躍にも注目です。