最終日は朝から細かい雨、そして常時5m/s以上の強い風が吹き、選手を苦しめることが予想されていました。気温は13.5度との発表でしたが、体感ではもっと寒い。レインウェアを着ている選手もいたし、そうでない人はかなり寒そう……我々メディアもかなり厚着をして、過酷になるであろう1日に備えていました。
そんな状況から、今日はスコアが伸びないと誰もが思っていました。現場では「3アンダーがでればいい」「60台で回る選手はあまりいない」と。耐えることができたら大逆転もあると。
予想通り、スコアはほとんど伸びません。とりわけ、最終組のサイ・ペイイン、イ・ミニョン、ぺ・ソンウの3人は前半でスコアを落とし、上位の顔ぶれに変化が出てきました。サイ・ペイインはまだ粘ってトップにいたましたが、前半で2つ伸ばした黄金世代の臼井麗華、新垣比菜、そしてイーブンで耐えた小祝さくらが上位に来る展開に。
このときの心境を小祝は会見でこのように話しました。
「自分も伸ばせなかったのですが、まわりの選手が伸ばせていないことがラッキーでしたね。ハーフターンするときは風も雨も強くて、寒いなぁと思いながらプレーしていました」(小祝)
サンデーバックナインに入ると、もう誰が勝つかなんてまったく予想がつかない。気がつけば鈴木愛も、渡邉彩香も上がってきている……。ひとつバーディがくれば順位が一気にジャンプアップするような状態のなか、5番からパーを並べてきた小祝は、のちに「キーホール」と語った15番で勝負に出ました。ドライバーでのワンオン狙いです。
「ピンまで240ヤードくらい。左手前のバンカーまでは230ヤードくらいだったと思います。自分の順位もわかっていたし、ここはみんな狙うと思っていたので『自分も攻めないと!』と思っていました。風が左から来ていたので、左狙いで打ちました」(小祝)
結果は、あわや池ポチャかというグリーン右の池ギリギリに着弾するも、ピンまで20ヤードの左足上がりのラフに止まってセーフ。そこから見事にアプローチを寄せバーディを奪いました。次の16番でもバーディとした小祝は10アンダーまでスコアを伸ばし、最終18番を迎えます。
最終日の18番はこの日もっとも難易度が高いホール。それは小祝自身もわかっていたようです。
「もともと距離が長い(405ヤード)のに、風がアゲンストになっていました。こんな状態でみんなどうやって帰ってくるのかなぁと思っていました。後ろの組がまだ伸ばす可能性があったので、ここでパーをとらないとプレーオフになる。今日の18番でプレーオフになったら……ちょっと厳しいな、と」(小祝)
2打目でグリーンに乗らず、2メートルくらいの“微妙”なパットを残すことに。小祝は表情には出さないが、この場面、もっともしびれたと話します。
「今週は本当にパットがよくなくて……。カップを外すラインだったし、正直自信はありませんでした。半分くらいは入らない覚悟で打ちました。入ってくれてよかったです」(小祝)
10アンダーでホールアウトした小祝は練習グリーンでプレーオフに備えてパッティング練習をしていたが、1打差で追っていた最終組のぺ・ソンウの3打目が入らなかった瞬間、小祝の優勝が決まりました。
最終日は各選手、苦しいゴルフを強いられ、ホールアウトしてくる選手の顔からは2日目までとは違う疲労感が伝わってきました。それだけ過酷な状況のなか、小祝は変わりませんでした。どんな状況でも「いつも通り」のプレーができる。本当の強さを見た試合でした。