2021年の新製品の隠れた特徴が、販売する店舗を限定したモデルが増えていることだ。例えば、テーラーメイドなら、最も上級者向けモデルである「SIM2」のドライバー、FW、そしてレスキュー(=UT)が、セレクトフィットストア限定モデルとなっている。
このセレクトフィットストアは500店以上あり、購入しにくいということはないが(※とはいえ現在は1Wがかなりの品薄だという)、フィッティングやカスタマイズを重視していて、販売手法自体も通常とは異なっている。
キャロウェイでは、同じく最上位機種の「エピックMAX LS」が、キャロウェイセレクテッドストアと公式オンラインストアのみの販売となっている。キアマニアの注目を集める2大海外メーカーが、同様の施策をとっているのは面白い。もっとも耳目を集めるはずの上級者モデルを店舗限定にするとは、これまでなら考えられなかったことだ。
理由は色々考えられるが、そもそも注目を集めている割に、最上位モデルはそれほど売れるわけではないというのも大きいと思う。たとえば、キャロウェイであれば、前作までは「ノーマル」、「サブゼロ」、「MAX」または「スター」と名のつくモデルが、同シリーズでラインナップされていたが、上級者向けの「サブゼロ」の販売は、全体の1割程度なのだという。
プロの使用率が高く、ギアマニアの注目を集めるため、どうしても話題になりやすい上級者向けモデルだが、実際に選んでいるゴルファーは実は少数派なのだ。
とはいえ、彼らは腕前もあり、クラブにも詳しく、お金をそれなりにかける層でもある。そのためというわけではないだろうが、これらの限定モデルは通常商品と異なり、ほとんど値引きしないのだという。店頭で交渉しても1割程度の値引き率という話もある。フィッティングをして、カスタムもして、納得づくで購入する代わりに、費用の方もかかるというわけだ。上記機種を買う層こそ、高くても欲しい物を買う人が多いということだろう。
3月19日に発売されたばかりのタイトリスト「TSi1」と「TSi4」もタイトリストセレクトストア限定の販売となる。「TSi」シリーズは、昨年11月に「2」と「3」が発売されたばかり。こちらは好調に売れているという。多くのゴルファーは、「2」と「3」のどちらかが合うが、さらに軽くてやさしいモデルが欲しい人は、「TSi1」。さらにハードで操作性の高いモデルがほしいなら「TSi4」を選択するかたちになる。
これまで気軽に購入していた層には、販売チャネルの縮小、費用の高騰、場合によってはカスタムによってすぐ入手できないなど、改悪に感じる人も多いかもしれない。一方、メーカーにとっては、フィッティングなどを通して、製品をより好ましいかたちでゴルファーに届けられるメリットがあるし、数量を絞れるなら、新たな選択肢としてモデルを増やすことも可能になるかもしれない。今後もこうした販売スタイルをとるクラブが増えてくるだろう。