順回転とねじれ具合をパッティング練習でチェックできる
2トーンカラーのゴルフボールというと、古くはPINGの「EYE」(90年代)、最近ではキャスコの「KIRA-LINE」(2016年より現在も発売中)をすぐに思い出すが、ダンロップが3月から限定テスト販売を始めたNEW スリクソンZ-STAR/Z-STAR XVの「DIVIDE(ディバイド)」ボールは、ウレタンカバーとしてはおそらく世界で初めて2トーンカラー化に成功したモデルである。
PGAツアーで活躍する松山英樹は、白いボールの赤道に油性ペンでグルリと線を書き、パッティング練習時にそのラインの傾きで順回転具合とラインに対するズレを確認する。その際に「自分で線を引くよりボールが最初から赤道でカラーがくっきり分かれているとありがたい」とメーカー担当者にリクエストしており、それが今回の「DIVIDE」の誕生につながったのだ。ちなみにディバイドとは“半分に割る”的な意味である。
ウレタンカバーでの2トーン化は外野が思うほど簡単なことではない。筆者は10年以上前、まさにダンロップのボール開発担当者に2トーン化の実現性について問い合わせたことがあるが、その時は“正直、難しいです。現状は線をグルリと正確に描くのさえ無理ですね”とニベもない反応だった。世界のHIDEKIと、しがないゴルフ雑誌の編集者ではリクエストの重さが違うのは当然だが(笑)、あくまでも当時の製造技術では本当に難しかったのだろうと思う。おそらくだが、今でもそう簡単ではないと推察する。それもあっての数量限定のテスト販売なのだろう。
あるいはウレタンカバーでなければ他ブランドのように、もっと簡単に実現できたはずだが、ボールのフィーリング、とくにパッティングでの感触や音に敏感な松山のオーダーとなれば、使用ボールと同じモデルで2トーン化しなければ意味がない。ゲームで使わないボールでうまく転がすことができても、練習とはいえないのである。
その意味では、普段は違うボールを使用しているのに“2トーンだ!珍しい!”と「DIVIDE」に飛びつくのは拙速すぎる、と釘を刺しておきたい。パッティングやショートゲームは、まず「使用ボールを決めて、そのボールのフィーリングに慣れる」ことが上達の第一歩。複数のボールを頓着なく使い、ラウンドを繰り返してもタッチが違いすぎて安定した距離感など出せるようにはならないのだ。「DIVIDE」を練習に取り入れるのならば、ぜひラウンドでも「DIVIDE」、あるいは他のカラーのNEWスリクソンZ-STAR/Z-STAR XVにしていただくと、効果満点だと思われる。
回転を操る感覚が養える2トーンカラーの効用
2トーンカラーのゴルフボールでアプローチやパッティングをしてみると、ゴルフがいかにまっすぐにボールを回転させることが難しいスポーツであるかを痛感すると同時に、回転がいかに結果(高さ・方向・止まりやすさ)を左右するものなのかを実感する。たった10ヤードのアプローチでも、同じ回転でボールを打つことは非常に難しい。ターゲットに対してイメージした弾道・球質で、ボールを打ち続けることは困難であることがわかるのだ。バラ付きは避けられないのである。
しかし、2トーンカラーのゴルフボールを打っていると、 “これならだいたい同じような回転で打てるのでは?”と気づくことがある。それはあえてボールに意図的な回転を与えようとしてみることだ。例えば、カットに打ってわざとスライス方向のサイドスピンがかかるように打ってみる。そうすると意外に何度打っても、同じような高さ、タッチ、キャリーでアプローチすることができたりするのだ。逆にまっすぐ順回転を狙ってみると、右、左と一球ごとに出球の方向さえ定まりにくくなってしまう。これは野球のピッチャーが変化球でカウントを取りにいくのと同じ。ボールゲームは、自分で曲げに行ったほうが正確にコントロールしやすいのである。
曲げ方を知れば、まっすぐもなんとなく理解できるものである。ゴルフが回転を操るボールゲームであることに気づくには、2トーンカラーは非常に効果があるし、大きな意味がある。これを単に「まっすぐ」をチェックする練習球で終わらせるのではなく、ボールを操って楽しむゴルフを思い出すきっかけになればいいと思う。他の球技(バレーボール、バスケットボール、サッカーなど)では2トーンボールは決して珍しくない。緩急、自由自在。回転が見えてくるとそのスポーツの楽しさ、深みが増すことは明らかである。