フジクラ「ベンタス」や三菱ケミカルの「テンセイ」、グラファイトデザイン「ツアーAD」,
USTマミヤの「アッタス」など、日本メーカーが手掛けるドライバーのカスタムシャフトは海外でも人気が高い。
これはプロも例外ではなく、PGAツアーにも日本メーカーのシャフトを愛用する選手が多いわけだが、その一方で、海外発のシャフトを使用する選手ももちろん存在する。
多くの日本のゴルファーは、国内のカスタムシャフトメーカーのモデルがすごく優秀だからこそ、海外製のシャフトに手が伸びづらい部分もあるかと思うが、そこはトッププロが選んだシャフト。それ相応の利点があるはずだ。
ということで、PGAツアーにも使用者がいる海外メーカー製シャフト「TPT」と「オートフレックス」を、プロゴルファー・中村修と堀口宜篤の両名に試打して確かめてもらおう。なお、ヘッドはピン「G425マックス」のロフト10.5度モデル、ボールはタイトリスト「プロV1」を使用して行った。
まずはオートフレックスから見ていこう。こちらは韓国発のシャフトで、3月から日本での展開が開始されたばかり。PGAツアーではアダム・スコットが実戦投入して注目が集まったほか、フレッド・カプルスも使用している。
特徴は、かなりしなりが入る点と、軽量であること。今回試打したスペックはラインナップの中でも上から2番目に硬い「SF505」。ヘッドスピードで言うと42~49m/sを対象にした51グラムのモデルだ。
試打した中村は「ラインナップの中では硬いほうとはいえ、ワッグルでもしなりを感じられるくらいグニャグニャです」と言うが、果たしてその性能はいかほどのものか。さっそく両者の試打結果を見ていこう。
【堀口のオートフレックスの試打結果】
HS43.3m/s キャリー241.3ヤード トータル266.7ヤード 打ち出し角11.9度 ボール初速64.2m/s スピン量2436.3回転
【中村のオートフレックスの試打結果】
HS45.3m/s キャリー253.3ヤード トータル278.3ヤード 打ち出し角11.9度 ボール初速67.3m/s スピン量2430.3回転
「トップでしなるんだけど、一気に戻ってくる感じです。なのでしなり過ぎて振り遅れる感じは意外とありませんね。感触としても一瞬グニャっとくる感じはあるんですけど『そのまま行ってしまえ』とそのまま振ると、ちゃんと付いてきてくれますね。不思議な感じです」(堀口)
中村も「しなるけど意外とインパクトまでに戻ってきてくれます」と堀口に同意する。
「グニャグニャと言っても、手元と先端部はしっかりしていて、中間から先にかけてがかなりしなる感じです。スピン量も意外と増えませんね。インパクトではちゃんともどってきてシャフトが真っすぐになった状態で当たってくれます」(中村)
中村はオートフレックスを「感覚的には8割くらいで打っても、9割のスピードが出るシャフト」という。そのうえで「ただ軟らかいだけでなく、それこそハードヒッターであるはずのPGAツアー選手でも扱えるシャフトに仕上がっています」と評する。
「しかも、しなりが強いぶんタイミングも取りやすいですね。コースだとどうしても風であったり打ち込みたくないエリアのことがチラついて、スウィングのタイミングなどが変わってしまうこともあると思いますが、オートフレックスだとそれが起きづらい。素振りだけでもしなるからイメージも作りやすいですよ」(中村)
スイス製シャフト「TPT」の実力は?
続いて打ったのはスイス発の「TPT」。こちらはジェイソン・デイが使用しているシャフトだが、特徴としては、カーボンシャフトは通常職人によって手巻きして製造されるところを、完全に機械による作業で行っている点。そのため製品誤差が極端に少ないほか、先端部の巻き数も60と通常のモデルよりかなり多めになっている。
スペックも豊富にラインナップされているが、今回試打した「17 Hi」は60グラム台で、TPTの中では中間からやや硬めに当たるモデル。
感触としてはオートフレックスとは真逆で「クラブを持っているだけでもわかるくらい、めちゃくちゃハリがあって硬いシャフトです」と堀口。こちらもさっそく試打結果を見てみよう。
【堀口のTPTの試打結果】
HS43.3m/s キャリー240.3ヤード トータル269.3ヤード 打ち出し角11.9度 ボール初速64.6m/s スピン量2138.3回転
【中村のTPTの試打結果】
HS45m/s キャリー250.6ヤード トータル272.8ヤード 打ち出し角10.8度 ボール初速67.6m/s スピン量2950回転
「どちらかと言えば自分の力で振ってくるタイプのシャフトですね。スピンは少ない。ヘッドの性能をそのまま活かしてくれている感じはあります。あんまり球がねじれる感じはせず、余計なスピンが入らない感じで、まさにPGAツアー選手好みの性格と言えるでしょう」(堀口)
中村も「日本のシャフトで言えば、ベンタスブラックやテンセイホワイトのようなPGA選手が好んで使う低スピンでハリのあるシャフトに近い」と評する。
「ただ、振っていった時に曲がらない感じはより強い印象ですね。試打ではずっとド真っすぐしか出ませんでした。トルクが全然感じられない、ねじれが起きないシャフトと言えるでしょう。スペックさえ選べば十分打てそうですが、硬めのモデルは本当に相当ハードな仕上がりになりそうですね。ある程度振っていける方には選択肢として十分アリだと思います」(中村)
まとめると、かなりしなりが入りながらもしっかり振っていけるオートフレックスと、PGAツアーのトレンドと言える低スピン性能を持つ硬シャフトで、さらに曲がり幅が少ないTPTと言ったところだろうか。気になった方は試してみてはいかがだろう。